2024年11月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年11月3日

 エクアドル大統領選挙をめぐる状況と新政権に対する米国の支援の必要性について、大西洋評議会のラテンアメリカ研究者Isabel Chiribogaが、10月12日付けで同評議会のニュースサイトに‘Ecuador’s presidential election is a choice between the future and experience’と題する解説記事を掲載している。要旨は次の通り。

(Rawf8/gettyimages)

 10月15日、エクアドル大統領選挙の決選投票がダニエル・ノボアとルイサ・ゴンサレスの間で行われるが、世論調査ではノボアが7%の差をつけてリードしている。(注:投票の結果、ノボアがゴンサレスを下した)

 エクアドルは現在、殺人事件、自動車爆弾テロ、銃撃事件、深刻化する治安危機に悩まされている。国際犯罪組織と地元の犯罪組織が、不法な麻薬、人身売買、武器売買の利益をめぐり支配権を争っている。国民が指導者の交代と、これらの課題に対処するための新たなアプローチを切望するのも無理はない。

 しかし、両候補のキャンペーンは2つの点で一致している。1つは、国民に人気のないラッソ現大統領との明確な「差別化」の試みであるがこれは驚くに当たらない。

 両候補は、現政権を批判する一方で、有権者の共感を得られるような政策を提案している。注目すべきは、レトリックではなく行動を求める国民の声に応えるため、互いへの攻撃が限定的であることだ。

 2つ目の一致点は、気候変動、環境保護、持続可能性に関する問題である。この分野は、エクアドルがここ2、3年、自然と負債のスワップ、海洋保護区の拡大、アマゾンの保護活動を通じて開拓してきた分野である。

 ノボアが勝利を収めた場合、大変な難題に直面することになる。エルニーニョなどの気候変動の影響、暴力や組織犯罪の増加、民主主義制度への信頼の低下、そして、それらに対処する上での財政的制約だ。今年、政府は国内総生産の2%に当たる280万ドルの財政赤字を抱えることになり、新政権は公約の実現やこうした課題に対処するのに十分な資金を確保するのに苦労することになる。

 この地域における影響力が低下している米国にとって、エクアドルの将来は大いにかかわりがあり、どちらが勝つとしても、米国はエクアドルへの関与を増やすべきだ。特に治安や気候変動は、米国の優先事項であり、国交が正常化した2012年以来改善している両国関係をさらに強化する機会をもたらすであろう。

 食糧不安、移民、国際犯罪、気候変動といった世界的な課題が更に切迫する中、この進展を拡大することで、米国はエクアドルにおける戦略的な足場を強化しこの地域へのより広範なアクセスを得ることができるだろう。


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