アルゼンチン大統領予備選でトップに立ったミレイ候補と3時間にわたるインタビューを行ったEconomist誌は、同人がアルゼンチンの救世主とはならないと9月9日号の社説‘Can Javier Milei’s radical libertarianism save Argentina?’で論じている。
数十年にわたるペロニスタ政権の経済失政の後、アルゼンチン国民は悪徳で無能な政治家にうんざりし、救いを求めている。彼らの失望が、2021年に議会入りしたばかりの自称リバタリアンで「無政府資本主義者」のハビエル・ミレイを、10月の大統領選挙の最有力候補に押し上げた。
ミレイの話術は巧みで、新自由主義経済学に精通している。彼は、国営企業をすべて民営化し、経済をドル化し、1年目には国の赤字をゼロにしたいと考えている。肥大化した国家主義のアルゼンチンでは、過去の自由化の試みはすべて失敗に終わっており、長年、自由市場資本主義の話をすれば票を失うことが確実視されてきた。
ミレイがアルゼンチンにリベラリズムの新時代を切り開くのであれば大歓迎だが、その可能性は低そうだ。彼の政策は熟慮されたものではなく、コンセンサスを形成するどころか、統治に苦労するだろう。そして、もし不満が募れば、権威主義的になることを心配する向きもある。
アルゼンチン経済は確かに大胆な改革を必要としており、自国通貨を廃止してドルを導入するという彼の提案は、表面的には魅力的だ。ドル化は直ちにインフレ率を下げ、貿易に大打撃を与える為替レートの変動を終わらせるだろう。
しかし、そのようなシステムの下では、アルゼンチンの銀行や家計が立ち行くためのドルが必要になるが、ミレイはそれを供給できない。現在、アルゼンチンは最大の債権者である国際通貨基金(IMF)に対する債務を返済することさえできず、中国から借りた人民元を使っている。
更に中期的には、ドル化によって国家が紙幣を印刷するのを止めることはできても、アルゼンチンの放漫な財政政策が自動的に抑制されるわけではない。政治家は相変わらず過剰に借りようとするだろうから、財政再建には、アルゼンチンが過去にほとんど見せたことのない政治的意志が必要だ。
さらに悪いことに、アルゼンチンはデフォルトの危機に瀕している。アルゼンチンの中央銀行がペソとともに消滅すれば、最後の貸し手もなくなるため、ドル化はさらに痛みを伴うだろう。
次期大統領はIMFに直談判しなければならない。このようなデリケートで外交的な仕事は、ミレイには明らかに不向きである。
乱暴で、軽率で、奇抜なミレイがアルゼンチンに必要な救世主であるとは思われない。
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Economist誌は、アルゼンチンの大統領予備選でトップに立ったリバタリアン(自由至上主義者)のハビエル・ミレイに3時間にわたるインタビューを行い、その結果を踏まえたこの社説で、ミレイは、アルゼンチンに救いをもたらす候補ではないと断じている。