2024年12月6日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月28日

 アルゼンチンのミレイ新大統領は12月10日の就任式で困難な経済状況に対応するため国家システムを劇的に変革することを約束したが、実行できるか否かについて見方は分かれている。これにつき、12月10日付けのワシントンポスト紙は‘Argentina’s new far-right president promises shock to the system’と題する解説記事を掲載している。主要点は次の通り。

(panida wijitpanya/gettyimages)

 世界中の極右指導者に支持される自由主義経済学者ハビエル・ミレイが、10日、アルゼンチンの大統領に就任した。

 就任式の演説でミレイは、政治家階級による100年間の浪費が残した問題を解決するため、当初は困難であっても必要なすべての決断を下すつもりであり、短期的には状況は悪化するだろうが、その後には努力の成果が現れるだろうと述べた。

 彼は早速、いくつかの決定を発表した。最初の大統領令で、ミレイは政府省庁の数を18から9に削減した。

 選挙期間中の公約であった、ドル化と中央銀行の閉鎖は、もはや当面の課題ではないようだ。代わりに、緊急課題として財政赤字の削減に焦点を当てている。10日の演説では、「調整とショックに代わるものはない」と述べた。

 中道右派の元財務相で中央銀行総裁だった現実主義者のルイス・カプートを経済大臣に任命したことは、予想外にオーソドックスで市場フレンドリーな人選と受け止められている。

 ミレイは、外交政策でも攻撃的姿勢から後退している。選挙期間中、中国を「暗殺者」国家、ローマ教皇を「邪悪な左翼の代表」、ブラジルのルーラ大統領を 「共産主義者」と呼んだ。当選後、彼は、法王を「歴史上最も重要なアルゼンチン人」と称え、ルーラを就任式に招待し、習近平からの祝辞に謝意を表明し中国国民の幸福を祈ると伝えた。

 10日の式典には、スペイン国王を含む世界の著名な指導者たちが出席し、その中には、ハンガリーのオルバン首相やスペインのVox党のアバスカル党首など、世界的な極右勢力も含まれていた。トランプ前大統領は就任式に出席したかったが、ロジ的な理由で訪問が実現しなかったという。

 ミレイが最終的には経済危機の解決に成功するとしても、短期的には更なる悪化が予想される。ミレイの勝利以来、物価は上昇しており、エコノミストは、12月だけで20%上昇し、前政権による人為的な物価上限が撤廃されるにつれて、ミレイ政権の最初の数カ月は上昇が続くと予想している。しかし、これまでの経済モデルを打ち破るような計画は、若い世代には好評のようである。

 政治アナリストは、大統領としてのミレイの最初の演説は、特定の政策や具体的な計画に触れることを避け、潜在的な抗議行動を抑えるために「国民に調整の準備をさせようとした」ものだったと指摘している。         

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 12月10日のミレイの大統領就任式については、就任演説の内容と共に海外からの参列者の顔ぶれに関心が高まっていた。

 経済改革について、ミレイは当選後、それまでの主張であった中央銀行廃止やドル化に口をつぐんでいる。10日の演説では、財政支出の削減を優先しこれが避けられないことを強調したが、その具体的な政策の中身には触れなかった。


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