2024年4月20日(土)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年10月22日

 経済的な面もあります。借金の返済に充てるため金融業者からの借り入れを繰り返す多重債務が社会問題化していました。この制度が改変されたことが、自殺を減らす要因になっている可能性があると思います。自殺理由の1位は健康問題、2位は経済問題で、この2つで自殺者数の7割を占めていますので、経済面での対策は効果があったかもしれません。

自殺率の地域差があるのは何故か

――自殺理由の1位である病気には精神的なこと、つまり、うつ病が多く含まれているはず。うつになる要因のひとつに社会的な不安という指摘があり、社会的な不安の中には経済面も含まれています。リストラや派遣の人なら回顧などが常につきまとうからです。言いたいことは、自殺者の7割を占める健康と経済問題の大半は、うつと大きく関わっているのではないかということです。先生の著書である『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由がある』では、同じ社会問題があるのにコミュニティーの違いで自殺者やうつ病の罹患者数が異なることに着目されています。

岡:同じ問題に遭遇していても、うつ症状に陥る人とそうでない人、自殺する人としない人がいます。この事実をどのようにとらえるべきなのかをテーマとして本にまとめました。着目したのがコミュニティーです。社会的な課題は同じであっても、地域ごとに自殺者数が大きく異なるのはどうしてなのか。自殺予防因子が働いているのではないか、私はここに注目しました。

 経済問題を理由に自殺する人が多いのなら、その問題を取り除けばいいのですが、再び景気等の状況から経済問題が起きると、また自殺者数が増えることになります。対症療法のようなことではなく、経済の問題がどうであろうと敏感に反応する人を減らしていけるようにするべきでしょう。それを自殺率の低いコミュニティーの研究から探ったのが私の研究です。

 圧倒的に自殺者数が少ない地域を研究することで、危険因子が多くあっても、それを上回る予防因子がある、そこから学びとれることがあるはずだと考えたのです。


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