2024年11月22日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年1月21日

国家は取れるところから税金を搾り取る、重税による物価高

 財政再建に向けてお目付け役のIMF(国際通貨基金)の厳しい指導の下、スリランカ政府は税収増に必死だ。スリランカ滞在中に再三人々から聞いたのが「政府は金持ちや政治家から税金を取り立てないで、取り立てやすい庶民に重税を課して苦しめている」という不公平感である。

 VAT(付加価値税)は2022年に8%から12%に引き上げられ、2023年11月時点では15%。そして2024年1月から18%である。今年中には20%を突破すると人々は予想している。

 12月25日。スリランカ随一のビーチリゾートであるヒッカドゥアの中堅ホテルオーナーのK氏は35年前に日本留学したという論客である。同氏によると政府はすざましい勢いで各種税率を引き上げているという。現在の税率ではビール70%、蒸留酒80%が税金。ホテルの酒類提供認可(リカー・ライセンス)+宿泊許可証の更新手数料だけで年間40万円。

 K氏は日本製中古車ビジネスの経験もあるが、最近は日本での買付価格の2倍から3倍がスリランカ国内販売価格という。この差額の大半が税金と役人への手数料(賄賂)という。ちなみにK氏の友人のタクシードライバーは最近2015年製造のトヨタのヴィッツを150万円で購入。また、メリッサビーチで観光客の送迎をしていた運転手は2007年製造のトヨタのハイエースを2015年に250万円で購入したと語っていた。

重税とインフレで調度品や設備の価格は中国国内の2倍以上

 12月26日。ヒッカドゥアで2023年春にホテルを新規営業開始した中国人起業家のL氏。36歳であるが23歳から世界各地でビジネスをしてきた叩き上げの国際派だ。ホテルの建屋・土地は元オーナーのイタリア人から賃貸で借りている。

 営業開始にあたり必要最低限の家具・什器・家電などを購入したが、重税とインフレで中国国内価格の2倍以上だったと嘆いた。ちなみにスリランカで新車を購入すると、実用自転車3万5000円、ミニバイク35~45万円、三輪タクシー100万円が相場であるという。

驚異の昭和の日本製中古輸入自転車

 中国人起業家L氏の話を聞いて納得したエピソードがある。11月18日朝、宿で自転車をレンタルした。出てきた錆びたおんぼろ自転車はとても乗れそうにない代物だ。日本語の登録証を見ると45年前に製造された日本製だった。日本ではもはや屑鉄にしかならない昭和の遺物。

 完全にタイヤの空気が抜けている。母親が運転するミニバイクの後ろに青年が乗り自転車のハンドルを掴んでミニバイクに自転車が並走させるかたちで自転車屋に出かけた。なかなか戻らないのでしびれを切らしていると、1時間後にやっと青年が自転車に乗って戻ってきた。後輪のタイヤとチューブがボロボロだったので交換したという。前輪もかなりあやしいのだが。

 試しに庭をそろりと走ってみると後輪しかブレーキが効かない。またサドルがぐらぐらしており、しかもサドルの前半分が腐って崩れ落ちている。青年はサドル交換のため自転車屋まで一緒に行くという。青年が運転する車の後ろについて約3キロの道のりを立ち漕ぎで走って自転車屋へ。自転車屋のオヤジが在庫の山からそれらしい中古のサドルを探してきて交換した。

 他のゲストハウスでも偶にレンタル自転車あってもおんぼろ中古ばかりで快適に走れる自転車は皆無だった。自転車の新車が3万5000円では公立学校校長先生の月給と同じだ。スリランカでは昭和の遺物でも大事に乗らねばならない理由が理解できた。

以上 第3回に続く

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