2024年11月20日(水)

霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生を

2024年1月26日

 いまや霞が関はコンサルティング会社の〝重要クライアント〟だ。大手コンサル会社の中には、年間100億円以上の政府案件を受注している会社もある。新型コロナウイルス対策やデジタル化の波も影響し、政府の委託事業におけるコンサルの存在感は確実に強まっている。

(イラスト・マグマ・ジャイアンツ)

 元内閣官房のある官僚は「これまでは広告代理店に委託していたような案件も今はコンサルに委託したりしている。〝なんでも屋〟状態だ」と指摘する。実際、コンサルへ委託している案件名を見ると「分析」、「調査」のほかに、「周知広報」や「システム開発」、「クラウド導入」といった文言も目立つ。

 こうしたコンサル依存について、医系技官として政策立案にかかわっていた元厚生労働省の官僚は「本来は官僚がすべき政策立案が、コンサルに〝丸投げ〟になっている。ただ、コンサルの社員は必ずしも医療業界で働いた経験があるわけではない。問題があると内部の人間も自覚しているし、提案の質が費用に見合わないと感じることもあるが、官僚は他の業務で忙殺されていて、コンサルに頼らざるを得ない」と本音を吐露する。

 政府案件に携わっている大手コンサル会社のある社員も「『とりあえずやっておいて』といった〝丸投げ〟案件は少なからずある。官僚は数年単位の人事異動によって知見がたまりにくいのも問題なのではないか」と漏らす。

 多額の費用が投入されている外部委託だが、現状は決して良い政策を生むための理想の関係性にはないようだ。

外部委託で起きている
ミスコミュニケーション

 外部委託のフローは、一般的には発注者である政府が委託したい業務内容の詳細を記載した「仕様書」を提示し、それに基づいて、コンサルなどの民間企業が提案書を作り「入札」をする。そして政府が各社の提案内容や価格を見て委託先を決める、という流れだ。

 ある省の官僚によれば、外部委託にまつわる入札・契約業務を担当する職員は、担当している政策分野や入札手続きに精通はしているものの、必ずしも委託する業務や委託先の業界に詳しいとは限らないという。

 例えば、IT関連事業の委託を公募する場合、発注担当者は政策の専門家として利用目的などは仕様書に書けても、IT分野に精通しているわけではないため、どういった技術にどのくらいの費用がかかるか、といったことは分かっていない場合がほとんどだという。入札を希望する各社は、この仕様書を基に、どの程度のスペックが必要かを想像しながら提案書を作成する。そして、発注側が各社の提案を比較して、委託先を選ぶ。こうしてできあがった〝成果物〟が本当に発注者側にとって最適なものとなっているかは、想像に難くない。

 外部委託では、こうしたミスコミュニケーションが起きているのだ。


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