2024年12月22日(日)

霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生を

2024年1月24日

Wedge2024年2月号では、「霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なこと」を特集しております。特集では、前財務事務次官の矢野康治氏へのインタビュー記事を掲載しております。今回はその記事の一部を公開いたします。

 「役所の仕事は前例を知っておけば8割はできるものだ」

 入省1年目、ある先輩に真顔で言われたことがある。とても驚き、今でも忘れることができない。

矢野康治(Kouji Yano)
前財務事務次官 1985年一橋大学経済学部卒業、大蔵省(現財務省)入省。大臣官房審議官(主税局担当)、大臣官房長、主税局長、主計局長などを経て、2021年7月から1年間、財務事務次官を務めた。

 私が入省した当時は、日本経済のバブル化が進み、パイが広がったものをみんなで分かち合う、配り合うことができた時代であり、「前例踏襲」が霞が関の不文律であった。

 だが、時代は平時から乱世へと変わった。しかも「とてつもない乱世」になった。30年以上にわたる日本経済の停滞、少子高齢化、地方の過疎化、激変する安全保障環境……。前例だけでは解決できない事態に直面しているのが現在の日本の姿だ。こうした厳しい制約の中、複雑な連立方程式を解かねばならず、今まさに、官僚の「腕の見せ所」だと言っても過言ではない。

 ところが、近年の霞が関は、官僚の積極性が低下し、元気がないように見える。これには、この四半世紀の間、強化されてきた「政治主導」「官邸主導」の結果だと見る向きがある。確かにそれも一理あるかもしれない。

 だが、私は、政治主導の方向性が間違っているとは決して思っていない。乱世であるからこそ、正しい流れであり、その真価が問われているからだ。


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