「インテリジェンスは安全保障の観点から語られがちだが、災害においては、地域で何が起きているか、被害状況を把握すること」と語る。被害状況の把握について、自衛隊による航空機や情報衛星からの映像によって、被災エリアや建物倒壊の程度は知ることができる。これは画像情報によるインテリジェンスでイミント(IMINT)と呼ばれる。しかしながら、人命に関する情報は見えにくい。
そうしたインテリジェンス活動は現地からの情報に頼らなければならないのだが、被害情報は被災中心部ではなく、周辺からばかり集まる傾向がある。これは特に発災直後に起こりやすく、福田教授は「入ってくる情報にばかり流されてしまうと、初動に悪影響を及ぼす。プッシュ型で情報を取りにいかなければならない」と指摘する。
必要だった「交通規制」
被災中心部の情報を取り、対応していくためには、積極的にそのエリアに入っていかなければならないということだ。そのために、救助や物資を輸送するモノの流れを確保する「ロジスティクス」が重要となる。
能登半島での交通網は、沿岸を囲むようにして通る国道249号と、金沢市から輪島市の能登空港付近を結ぶ国道470号を含む「のと里山海道」、半島の中央部を通る県道が主な道路となっている。震災により、国道249号の多くの箇所で被害があり、寸断される状況となった。7日に実施した交通規制は、自動車が通れる「のと里山海道」と県道「田鶴浜堀松線」の、半島方面の下り線で実施した。
「消防救急、警察、自衛隊といったファーストレスポンダーを優先し、人命の救助救命活動を実施して現場の状況もしっかり把握すべき。緊急車両に限るという交通規制が遅い対応であったとも言える」と福田教授は振り返る。首都圏直下地震に関しては、東京都と警視庁が都内に入る道路をすべてファーストレスポンダーの車両に限定する交通規制を実施する計画となっているという。「周辺地域から消防や警察、自衛隊を参集させないと対応しきれない被害が起こり得る。石川県がどのような計画を作っていたのか、今後、検証すべき課題」と話す。
発災期におけるロジスティクスの確保は、人命救助やインテリジェンスのためにあるもので、そのための交通規制であった。また、石川県が発する「能登方面への不要不急の移動は控えて!」は、地域住民や県外から支援に来ようとする人たちへのリスクコミュニケーションであったと言える。なお、セキュリティは「水際対策」といった外部からシステムを守るもので、今回の震災では現状、大きな位置を占めていないと言えそうだ。