2024年11月24日(日)

田部康喜のTV読本

2024年1月27日

 1話から次の1話につないでいくのに、前回のドラマのエッセンスの繰り返しをいとわない。映像配信時代は複数のドラマを同時並行して観ることが多いので、元の舞台に引き戻す場面が必要である。

恋心と宮廷内権力闘争が次々と展開

 Netflixのドラマを手がけた大石静の手腕は「光る君へ」においても見事である。ネット上では時代考証とセリフが現代語であることなどに難点を指摘する向きがある。しかし、それは大石の計算済みと思う。

 平安時代の大きな歴史の潮流はドラマの伏線として押さえている。ドラマの主人公である紫式部と藤原道長らの専門家である倉本一宏・国際日本文化センター教授は『紫式部と藤原道長』(講談社現代新書、23年)のなかで次のように述べている。

 「道長が『源氏物語』や『紫式部日記』の執筆に及ぼした影響を考え、『源氏物語』と『紫式部日記』が道長なくしては成立しなかった」

 「紫式部が生み出した文学がその後の日本文学に大きな影響を与えたことは言うまでもないが、道長が確立した政治体制がその後の日本政治や人々の意識に大きな刻印を残したことも、また疑いようのないところである」

 「光る君へ」の第1回(1月7日)は、少年時代に三郎(子役・木村皐誠)と呼ばれていた道長(柄本祐)と、少女時代にまひろ(子役・落井実結子)の式部(吉高由里子)が、出会って、再会の日を約束した。しかし、まひろは現れなかった。その日にまひろの母・ちやは(国仲涼子)は、官職に就いていなかった夫の学者・藤原為時(岸谷五朗)の任官を願って寺参りをしていた道中に、道長の兄である道兼(玉置玲央)の馬前を横切ろうとして邪魔をした、と激高した道兼に切られて死んでいたのだった。

 第2回(1月14日)に至って、ドラマはまひろの少女時代から一気に15歳の成人の日を迎える。父の為時から手ほどきを受けた漢文と和歌の素養を生かして、絵師(三遊亭小遊三)の店の奥に御簾で姿を隠した代書屋を営んでいる。男性が女性に贈る歌の代作である。

 右大臣・藤原兼家(段田安則)の三男の道長も順調に出世して、右兵衛権佐(うひょうえごんのすけ)という位にあった。姉の詮子(あきこ・吉田羊)は円融天皇(坂東巳之助)の女御となって、懐仁親王(のちの一条天皇)を生んだが、天皇に嫌われて父の屋敷に戻った。

 そして、まひろ(吉高)は庶民の姿に変装して町に出ていた道長(柄本)と出会う。まひろは少女時代に道長との再会の約束を破った理由は語らなかった。

 そして道長の正体を聞くのだったが、答えてもらえなかった。そうこしている間に、ひったくりの盗人と道長は間違われて囚われの身となる。まひろは「そのひとではない」と役人に訴えたのだが。


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