2024年11月24日(日)

田部康喜のTV読本

2024年1月27日

新「season」へ展開

 ドラマのテンポは速い。観る者を飽きさせない。まひろと道長の淡い恋心と、宮廷内の権謀術策が錯綜する。道長の父・兼家は娘・詮子が産んだ懐仁親王を天皇にするべく、次男の道兼(玉置玲央)を宮廷に送り込んで、円融天皇の毒殺を命じる。

 兼家(段田)は次期天皇候補の東宮(後の花山天皇、本郷奏多)の動静を探らせようと、まひろ(吉高)の父である為時(岸谷)に漢文を教えることを理由に送り込んで報告を受けていた。為時は無冠である。兼家が為時にカネを支払っている。

 「光る君へ」は長編ドラマseason1からseason2に突入して、まひろ(吉高)と道長(柄本)の恋をからめながら進んでいこうとしている。

 第3回(21日)に至って、まひろの父・為時(岸谷)は実質的な雇主である、道長の父である兼家(段田)の意を受けて、いずれ宮廷に入る可能性のある左大臣・源 雅信(益岡 徹)の娘の源倫子(ともこ・黒木華)の動向を探らせる目的で、まひろを倫子が主宰する女性たちのサロンともいうべき漢詩や和歌の会に行くように命じるのだった。帰宅したまひろに為時は「倫子さまは東宮の妃なられてもおかしくはない。婿をとるという話はなかったのか」と聞くのだった。

 Netflixの長編ドラマに匹敵するseasonの変遷をたどっていくことだろう。道長が〝政権〟を盤石なものとするまでの平安の政変劇と、それにからむ宮廷の貴族、女御たちのドラマは限りない。

 登場人物たちのキャスティングも、これまでに紹介した人々に加えて飽きさせないだろう。まひろの弟の惟規に高杉真宙、道長の兄の道隆に井浦新、一条天皇の中宮の定子に高畑充希、そして、清少納言にファーストサマーウイカ……である。

吉高由里子が見せた〝覚悟〟

 「大河女優」の主役となった吉高由里子(35歳)について、これまでの俳優人生を振り返るとき、筆者は映画「蛇にピアス」(蜷川幸雄監督、2008年、原作・金原ひとみ))をあげたい。吉高は19歳にして、全裸シーンで刺青を入れるという過激な演技に挑戦した。R-15指定の刺青師とからだを重ねるシーンもあった。

 全裸シーンになんらかの意味があるとするならば、女優としての決心だろうか。その後に主役を務めた映画もドラマもコケタ(少数観客、低視聴率)記憶はほとんどない。連続テレビ小説「花子とアン」(14年)も彼女の画期といえるだろう。

 「光る君へ」の主人公・紫式部は、62歳ごろに亡くなったと推定されている。吉高はいま、娘役から飛躍を求められる年齢である。このドラマの初回の視聴率が低かったことについて、吉高はX(旧Twitter)にこうアップしている。

 「面白い番組が沢山ある中、下剋上大河として最後には沢山の人に愛される作品になっていたらいいなと思う今日でした」

 なかなかの覚悟ではないだろうか。

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