2024年の始まりである。年の初めは多くの人が心機一転、新しいことに取り組もうと考える節目でもある。そんな年明けに読みたい3冊の本を紹介する。
〝正月の風物詩〟にドラマ満載
まずは『箱根駅伝100年史』(工藤隆一著、KAWADE夢新書)。今年は恒例の箱根駅伝が第100回大会を迎える。毎年1月2日と3日に行われる大会を、正月気分に浸りながらテレビで観戦したり、沿道で応援したりする人も多いだろう。その百年余の歴史を本書はたどった。
草創期に試行錯誤して実施されるまでの舞台裏や戦争の影響、そして戦後に復活してから現在に至るまでの動きなど、時の流れを追いながら時代ごとの特徴を描いている。
読み進めると、百年という時間の中で、実に多くの出来事があったことがわかる。もともとこの大会はアメリカ大陸横断構想を目論んでいた日本マラソンの父、金栗四三らが、当初その予選会と位置付けていたことや(同構想は諸事情で実現せず)、選手に替え玉が使われるなど驚くべきこともあった。
戦争の影響も見逃せない。戦況悪化で大会は1944年から中断され、再開したのは47年の第23回大会からであった。選手として活躍したランナーが戦場で命を落としたケースも少なくない。この時代の記述からは、当時の関係者の複雑な胸の内が伝わってくる。著者はこう記す。
考えれば考えるほど無念な気持ちにさせられるが、彼らの「遺志の襷」は今日に至るまで、後継者たちが脈々とつなぎ続けているのである。
長い歴史の中で育まれた多くの関係者の気持ちのリレーがあってこそ第100回の大会を迎えることができたとも言え、その来し方を思うと感慨深いものがある。