先の二人は、トラクターやドローンなど新しい技術の導入だけでなく、その技術を使って経営の改善する「スマートファーマー」(日本の指導農業士と近い意味)で、GAP認証も取得。先の二人のうち、若い生産者はトラクターとドローンを自ら所有し、病原菌や害虫を天敵となる微生物や昆虫を活用して生物学的防除(茨城県ホームページ)に挑戦している。近年では、日本政府も自動操舵トラクター、衛星画像やドローンなどを使ったサービスなど日本企業のタイへの技術移転に力を入れる。
これに加え、タイ政府はタイ・チェンライ県での日本米栽培推進を研究などを通して支援している。タイでは、日本産米の栽培が根付いており、国としても推進している。「のりたけ米」の普及も必然であり、今後も進んでいくことが予想される。
日本に何ができるのか
タイでの日本食ブームは今後もさらに続くと予想される。日本米がタイという農業国で栽培される動きも止められないだろう。
関税や輸送コスト、輸送時間など日本からの農産物輸出は現地産の農産物に比べ不利な点も多い。タイ産日本米は低価格を武器に日本からの輸出米の強敵にすでになり、今後の技術発展や経営改革によっては歯が立たなくなることもあり得る。だとすれば、タイの米市場に広がっているタイ産日本米に対抗した輸出戦略がないと今後のさらなる日本産米の輸出拡大は難しくなるのではないだろうか?
必要なのは、低価格化とともに付加価値を付けることである。タイでも有機農業が安全安心と言われているし、脱炭素など環境に負荷のかからない農業が求められている。このことをできる限り数値化して、タイ産日本米に比べ高価格である理由を示すのは一案だろう。また、すでに日本政府が進めているように、スマート農業など革新技術の支援を通じて、現地の生産に寄与することで日本が得られるものもあるのではないだろうか。
農業生産国に日本の農産物を輸出するのであれば、それなりの覚悟が必要で、それを前提としての戦略が求められる。