2024年11月24日(日)

2024年米大統領選挙への道

2024年2月24日

「終身国家主席」への憧れ

 次に、中国と「確トラ」の関係をみてみよう。トランプ前大統領は「中国からの輸入品に一律60%超の関税を課す」と述べ、労働者票の獲得に乗り出している。同時に、中西部アイオワ州の大豆などの農産物を中国に購入させると強調している。

 高関税で圧力をかけて、中国を揺さぶる戦略をとるトランプ前大統領は、一見中国に対して強硬姿勢をとるように見える。しかし、本当にそうだろうか。

 ボルトン元大統領補佐官は回顧録の中で、トランプ前大統領の習近平国家主席の発言に対する反応を記している。同元大統領補佐官によれば、2018年ブエノスアイレスでのG20サミットの際に行われた中国とのワーキングディナーで、習主席が「米国では選挙が多すぎる。あなたに退任されると困る」とトランプ前大統領に語った。民主主義国家であれば、多数の選挙が行われるのは当然だ。

 この習主席の発言に、トランプ前大統領は頷いていたという。ボルトン元大統領補佐官は、トランプ前大統領が習氏の「終身国家主席」に憧れており、権威主義者に魅力を感じているとみているのだ。 

クアッド軽視か?

 では、仮にトランプ前大統領が大統領に返り咲いたら、何が中国にとってメリットになるのか。そして、日本にとっていかなる意味を持つのか。国際情勢において中国との関連でクアッドを考えてみよう。

 あるとき、バイデン大統領が献金者に対して、習国家主席がクアッドを気にしていたと明かしたことがある。習国家主席は、米国中心の多国籍の枠組みを中国にとって厄介な存在であるとみているのだ。

 トランプ前大統領は、バイデン大統領に嫌悪感を抱いており、バイデン氏が主導して作った多国籍の枠組みであるクアッドと同氏を心理的に重ねている。それ故、クアッドの戦略的重要性をあえて軽視する可能性がある。

 そうなれば、中国に対する牽制が弱まり、日本にとってそれは「懸念材料」となることは間違いない。さらに、トランプ前大統領は「ロシアとウクライナの次は中国と台湾だ」と述べるが、これまでの演説を聞く限り、台湾に対する具体的な言及は見当たらない。トランプ前大統領は台湾に対する関心が低いのではないだろうか。この点も、日本にとって懸念材料になり得る。


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