オバマ大統領がAPECを欠席する中、習近平主席は、TPPよりも参加国の多い貿易圏RCEPを推進する。このRCEPに米国は入っていない、と述べています。
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オバマ大統領のアジア歴訪中止は、アジア諸国を落胆させ、その隙に中国がアジアでの存在感を更に高めているというのが、上記解説記事です。
米国大統領のAPEC欠席は過去にもあります。1995年の大阪APECですが、その時はクリントン大統領に代わってゴア副大統領が出席しました。今回、バイデン副大統領が出席しなかった理由は説明されていません。バイデン副大統領は、ヒラリー・クリントンと並んで次期大統領候補にも噂される人物であり、元上院外交委員長で、中国の習近平とも、オバマ第1期政権からの付き合いです。もしバイデン副大統領が出席していたら、これ程、アジア諸国に落胆は無かったでしょうし、米国のアジアでの存在感は、充分示せたと思われます。
米国の存在が後退した隙に、中国が更に入って来るという指摘は、国際政治の常識です。冷戦時代は、力の真空にソ連が侵攻してきました。1997年のアジア通貨危機及び日本の不況で、日本企業がASEAN諸国から撤退すると、今度は、中国が経済成長を背景にアジア進出するようになりました。ミャンマー等西側の経済制裁が行なわれている国々にも、中国等は進出しやすくなります。
では、米国の存在感が薄まる分、日本が多少なりとも役割を果たすことは可能でしょうか。ある程度は出来るでしょうが、その役割は十分とは言えないでしょう。台頭する巨大中国には、1国では太刀打ち出来ません。ASEAN諸国、日本、米国等が連携しなければならないのです。
米国のアジア回帰には、軍事面と経済面の2つの側面があります。クリントン元国務長官は、南シナ海問題を中心に、海軍協力等、軍事面を強調しました。一方、オバマ第2期政権では、TPP(太平洋)とT-TIP(大西洋)の2つの経済連携を進めることを外交目標にしました。しかし、議会の批准が必要な経済協定は壁にぶつかっています。
今回、オバマ大統領が訪問を中止したフィリピンとマレーシアは、いずれも米国の利益、アジア太平洋の安定にとって重要な国です。南シナ海でのフィリピンと中国の対立は、尖閣諸島をめぐる東シナ海での日中対立にも影響します。そこでの米軍の関与は決定的意味を持ちます。そしてマレーシアは、TPPでの役割もありますが、その地政学的重要性が無視できません。マラッカ海峡等、海洋の重要航路を有し、太平洋とインド洋を結ぶ位置にあります。
来春、オバマ大統領は、日本を訪問する予定です。その後、フィリピン、マレーシア訪問も実現して欲しいと思います。
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