日本でも、日本プライマリ・ケア連合学会の若手家庭医たちが中心になってプラネタリーヘルスの作業部会を組織して、学会としての「宣言」を用意していると聞く。プラネタリーヘルスを志向する国内外の仲間とネットワークを作りつつ、地球規模の健康のために活動を広げていくことを期待したい。
「自然がどう見えるか、考えてるか」
H.S.さんが普段使用しているDPI方式の吸入器を扱う彼女の手技は正確だった。動画を一緒に見ながら、再度注意点を確認していった。その際に、DPIの処方理由の話から「プラネタリーヘルス」にも言及したら、彼女から質問があった。
「プラネタリーヘルスの定義って何ですか」
「『ランセット』の報告書には長い定義が書いてあるんですが、僕は短いバージョン『人間の文明とそれが依拠する自然界の健全性(the health of human civilization and the state of the natural systems on which it depends)』が好きです」
「ノーラン監督の映画みたいね」
「えっ、クリストファー・ノーラン監督ですか。『オッペンハイマー』でアカデミー賞とった」
「そう、時間が逆行したり、地面がめくり上がったりしそう(笑)。でも冗談じゃなくて私、仕事では蜂になったつもりで自然がどう見えるか考えてるでしょ。地球温暖化で花々の開花時期が狂ってくるし、時には咲かないこともある。温度や湿度に敏感な蜂にとっても過酷な時代。それが私の健康状態や喘息治療とも関係しているなんて、不思議な縁としか思えない」
「なるほど、映画になりそうです」