2024年5月5日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年3月29日

 また、ショッピングモール内で、アイスクリームメーカーのイベントも開催されていたが、女性スタッフと思われるファッションもどことなく韓国風である。

 ショッピングモール内に入居しているスーパーマーケットの食品売り場をのぞくと、輸入品が多いのに気がつく。お菓子などの加工品の日本産は多いものの、生鮮品は日本産を見かけなかった。果物については、韓国や中国から輸入されているものが多い印象だ。

 韓国産イチゴは1パック1700~2500円、シャインマスカットは2000〜3000円。前述の一人当たりGDPが約30万円であることを考えると、一般国民には高価なはずだ。このような果物のターゲット層はラオスの富裕層か外国人と言えるだろう。

 これらのショッピングモールを訪問している韓国人団体客を見かけたし、マッサージ店に中高年の韓国人がこぞって入店していくのも見た。

日本のポップカルチャーと農産品の連携を

 ラオスを訪問して、とにかく、韓国の進出が農業分野に関わらず行われており、驚きであった。ラオス人の官僚や民間の人たちからも頻繁に「韓国」という言葉が出てくる。

 20代の人から「日本のアニメや音楽が好きなのは、ひと時代前の20歳代の世代で、10代はK-POPなど韓国の文化が好き」と言われた。

 韓国は、官民挙げて、観光、音楽、スマホ、電気自動車(EV)など全産業の企業等がラオスに進出している。韓国の認知度が上がり、訪問する韓国人が多ければ、韓国人を対象にしたスーパーマーケットが成り立つのも頷ける。

スーパーの入口には、韓国EV社の広告が並ぶ

 日本では、輸出は農林水産省を中心に進めており、農産物だけの輸出に完結しがちである。ラオスでは、シンガポールやタイと違って、日本からの観光客も少なく、日本食レストランもあまり見かけなかった。まだまだ「日本」は認知されていない存在だ。

 ラオスはこれからの市場であるが、「将来性のある国や地域こそ日本農産物の有力な輸出市場」と考えた場合、韓国の手法は大いに参考になる。食の業界に限らず、さまざまな分野で輸出国とパイプを持ち、日本に親しんでもらうことは推進すべきであろう。そのためにはオンラインなどに頼らず、対面の人的交流がかかせない。

 日本はアニメなどのポップカルチャーが強いため、農業界とこのような分野との連携は生かしていくべきだ。ラオスで日本人や日本文化を身近に感じてもらい、ラオスの若い世代に日本食を食べたいと思ってもらえれば、今後成長が見込まれるラオスが、日本の農産物の輸出先になっていくのではないだろうか。

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