2024年4月20日(土)

ブルキナファソ見聞録

2013年11月15日

先生の声に真剣に耳を傾ける大人たち

 ある教室では、授業開始の時間に先生が来なかった。生徒は大人しく1時間半近く待って、現れた先生はタンクトップにキャップを被った若者。あまり申し訳なさそうでもなかったので、私としてはおいおいおいと思ったが、いざ、授業が始まると、生徒はそんな先生でも一言も聞き漏らすまい、一文字も見逃すまい、とかじりつくようにじっと前を見ながら、分数計算を学んでいた。夜間学校で教えてくれる先生というのは恐らくとても貴重なのだ。

 別の教室で、最も生徒数の多かった小学校1年生の授業を行うクラスには、溢れんばかりの生徒。みんな何かしらの事情で学齢期に学校に通えなかった、もしくは途中でやめざるを得なかった人達である。30代の男性は、昼間の通常の学校に通う小学校1年生の子供を抱えている。自身は夜間の学校で、子供と同じ1年生の勉強に励む。彼は若い頃に隣国コートジボワールに出稼ぎに行った際、読み書きができないことによる不自由さと生きていく難しさを痛感し、勉強を始めたという。

学ぶ意欲と楽しさを知る子供
教育環境の充実を願う大人

 限られた国家予算の中で、政府の手厚い支援は受けられない彼らだが、学びたいという意欲がひしひしと伝わる、真っ直ぐな意志を持った人々。他の国も同じかもしれないが、ブルキナファソの良いところは、こういう人たちがいるところだな、と思う。現状維持で今を幸せそうに生きる人が多いのも事実だが、彼らがそれ以上何も望んでいないということではなく、学びたい、知識を得たい、仕事がしたいと、伸びていくための欲を持っている。

 ブルキナファソの教育を眺める時、ある程度の数字や情報があり、明るい未来を感じさせる子供たちの教育と、すっかり日の落ちた夜の学校で、貴重な電気を点けながら学ぶ大人たちの教育と、境遇の違う裏表のようでありながら、そんな大人たちの姿を見て子供たちは学ぶ意欲と楽しさを知り、子供たちの姿を見て大人は教育環境の充実を願うのだと考えると、彼ら全員でこの国が成り立っているのだと、そんな当たり前のことを、改めて思った。


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