2024年5月17日(金)

都市vs地方 

2024年4月4日

自らが稼げる形に

 入居者が働き始めるので事業に伴う経費の60%は家賃収入でまかなうことができるようになった。この建物のホールをレセプション等に貸して賃料収入を得たり、その他の事業を自分たちで行なったりして25%を稼ぐ。行政からの補助金は、経費全体の5%。企業や財団からの寄付が10%にすぎない。

 このモデルが軌道に乗ったのでコモングラウンドコミュニティは次々と事業を拡大し、マンハッタンとその周辺に8軒、1700人分の宿泊施設をもっている(『10万人のホームレスに住まいを』藤原書店)。

 ロザンヌ氏らの活動は、ホームレスらに当面のベッドや食料を提供することよりも恒久的な住居や仕事をもたらし生活基盤を確立することに努めた点に特徴がある。彼らから家賃収入が得られるモデルをつくることに成功したため事業を継続し拡大することができた。こうしてロザンヌ氏はアメリカの代表的なソーシャル・アントレプレナー(社会的起業家)の一人となった。

 ニューヨーク市の支援局が8万6000人を超す人々を収容していることは驚嘆に値するが、これらの人たちをいかにして職につけるのかが、市役所とニューヨーク市の経済・社会に問われている。恒久的な住居の問題に加えて、言語、職業訓練、マッチングなど課題は多い。

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る