2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月24日

 もう一つの論点は、安全保障面でどのような仕組みを使うのかの問題である。NATOの仕組みか、EUを活用するのか、二国間で行うのか。

 フランスは、かねてより欧州統合を進めることへの関心が強い。自らがそこで中心的な役割を果たすことが前提である。フランスとしては、欧州の防衛力を高めることはEUのプロジェクトとして進めたい。ところが、国境に防衛施設を建設しようとするほど切迫感の強い前線の国家にとっては、EUのみに依拠する気にはなりにくい。

フランスへの信頼

 さらに、ロシアの最前線にある国々には、核兵器を保有し、「欧州の抑止力」の中核となることが期待されるフランスに対する「信頼感の赤字」とも言うべきものが存在する。フランスは、2014年のロシアによるクリミア・ウクライナ東部侵攻以降も、ロシアを大国間協調の枠組みに戻すべく、対話による事態の収束を目指してきた。14年から22年にかけてのフランスの動向を考えてみれば、東部ウクライナでの紛争を収拾するための「ミンスク合意」「ミンスク2」から22年2月のロシアによるウクライナ侵攻の直前のマクロン大統領の訪露に至るまで、フランスは、前線の国家から見ればロシアに宥和的と取られる動きを示してきた。

 この解説記事からも垣間見られるそうした幾つかの裂け目を考えると、欧州独自の抑止力を構築するのは、「言うは易く、行うは難し」であることが改めて痛感される。

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