鳥獣害から生まれた
絶品料理の数々
足元ではシカの獣害対策にも乗り出しており、皮つきシカ肉を隣県の広島市動物公園の餌として使用したり、「猪鹿鳥」と銘打った定食に使用するお肉を提供したりしている。
取材後、美郷町役場から程近く、「猪鹿鳥」定食を提供する飲食店「またたび」を訪問した。シカ肉の竜田揚げ、しぐれ煮、そしてイノシシ肉の麻婆豆腐など、どれも絶品だった。イノシシ肉は、豚肉よりも味に深みがあった。シメは豚骨ならぬ、イノシシ骨の「山くじらラーメン」をいただいた。これも初めての味で、クセもなく、イノシシとは思えないほど美味だった。店主の山本真さんはこう話す。
「ラーメンは作ったことがなく、試行錯誤の末に今の形になりました。最近は、きちんと処理されたイノシシ肉のほうが、畜舎で育てられた牛肉や豚肉よりもにおいもなく、扱いやすいと感じています」
山本さん夫妻も隣町からの移住組だ。鳥獣害対策を起点として、新しい仲間も加わりつつある。最後に安田さんはこう力説してくれた。
「『高齢化』『人が少ない』は言い訳です。高齢者も頑張るんです。住んでいるわれわれが『こんな町に住みたくない』と思ったら誰も来てくれませんよね。ここで暮らしてよかったと思えることが、持続的な地域づくりになるのだと思います」