2024年7月16日(火)

Wedge2024年4月号特集(小さくても生きられる社会をつくる)

2024年5月30日

鳥獣害から生まれた
絶品料理の数々

 足元ではシカの獣害対策にも乗り出しており、皮つきシカ肉を隣県の広島市動物公園の餌として使用したり、「猪鹿鳥」と銘打った定食に使用するお肉を提供したりしている。

 取材後、美郷町役場から程近く、「猪鹿鳥」定食を提供する飲食店「またたび」を訪問した。シカ肉の竜田揚げ、しぐれ煮、そしてイノシシ肉の麻婆豆腐など、どれも絶品だった。イノシシ肉は、豚肉よりも味に深みがあった。シメは豚骨ならぬ、イノシシ骨の「山くじらラーメン」をいただいた。これも初めての味で、クセもなく、イノシシとは思えないほど美味だった。店主の山本真さんはこう話す。

飲食店「またたび」の山本さんご夫妻

「ラーメンは作ったことがなく、試行錯誤の末に今の形になりました。最近は、きちんと処理されたイノシシ肉のほうが、畜舎で育てられた牛肉や豚肉よりもにおいもなく、扱いやすいと感じています」

イノシシ骨の「山くじらラーメン」。もちろん、麺の上に乗っているチャーシューもイノシシ肉だ
イノシシ肉を挽肉として使用した、麻婆豆腐。ピリッとした辛さの中に大地を駆け抜けたイノシシの力強さもどこか感じる、至高の一品だった

 山本さん夫妻も隣町からの移住組だ。鳥獣害対策を起点として、新しい仲間も加わりつつある。最後に安田さんはこう力説してくれた。

 「『高齢化』『人が少ない』は言い訳です。高齢者も頑張るんです。住んでいるわれわれが『こんな町に住みたくない』と思ったら誰も来てくれませんよね。ここで暮らしてよかったと思えることが、持続的な地域づくりになるのだと思います」

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Wedge 2024年5月号より
平成全史
平成全史

小誌の創刊は、時代が昭和から平成となった直後の1989年4月20日である。平成時代は、政治の劣化や経済の停滞など、多くの「宿題」を残した。人々の記憶から忘れ去られないようにするには、正確な「記録」が必要だ。2号連続で「平成全史」を特集する。


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