2024年12月7日(土)

Wedge2024年4月号特集(小さくても生きられる社会をつくる)

2024年5月19日

 岐阜県飛騨市古川町畦畑集落──。

 2月下旬、飛騨市役所がある中心部から畦畑集落のある山間部に車で向かうと、それまではらはらとしか舞っていなかった雪が、大粒のボタン雪に変わり、通行する車も少ないため、あっという間に銀世界となった。

2月の飛騨は大粒の雪が舞う(WEDGE以下同)

 この畦畑集落でまとめられた一冊の報告書がある。「畦畑の引き継ぎを考える座談会」。

「畦畑の引き継ぎを考える座談会」報告書

 住民と、行政、専門家(金沢大学林直樹研究室)を交えて行った計4回にわたる座談会をまとめたものだ。集落の人口が減少し、高齢化も加速度的に進行していく中で、「自分の農地、家をどう引き継ぐのかを考え、そのうえで、自分たちの集落(むら)をどのように引き継ぐか考える」ための座談会が行われた。

 報告書の中で目を引くのは集落の将来についての「不都合な真実」にきちんと向き合っていることだ。

 まず全体像について。畦畑集落の人口は2000年の88人(高齢化率38%)から、20年で52人(同46%)となり、40年には17人(同82%)になると推計されている。

 ここから、よりミクロなデータが示される。相続した農地の「バッドシナリオ」について16世帯に問うている。

「農業をやめるだろう6(37.5%)」「現状の農業を維持するだろう1(6.3%)」

「貸したり売ったりもできず耕作放棄地になるだろう6(37.5%)」

「無回答3(18.8%)」

 そして、12世帯(75%)が、「畦畑に今後も住み続けてほしいが難しいと思う」と答えている。

冬には一面銀世界でも、それぞれの土地を「ゾーニング」している

 これを踏まえて行ったのが「ゾーニング」の検討だ。人口減少、つまり農業の担い手の減少が続くという前提に立ったとき「すべての農地を守ることは難しい」という結論になる。そこで、「農地として残す」「遊休地にする」「林地化する」などという将来設計を行うことができるようになる。

 畦畑地区で生まれ育ち、農家を営む柳裕治さん(52)は「座談会をやってみて、将来に向けてどのような選択肢があるのか示すことができたことは良かったです。ただ、こうした議論はもっと早くするべきでした」と振り返る。


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