飛騨市農業振興課担い手支援係長の葛谷智徳さんも「住民の方々の間でもいろいろな考え方の違いや温度差はあります。ただ、こうした議論ができたことが大きな一歩だと思います」と、前向きにとらえている。
未来への種まき
小さくなることを前向きにとらえ、生き残っていくための取り組みも始まっている。それを担うのが、住民の日常生活の困りごとなどに寄り添う集落支援員の屋比久晃平さんと古田崚さんだ。
26歳の2人は岐阜県内の大学の同級生で「自然好き」ということで飛騨市の公募に応じ、昨年の4月から集落支援員になった。
今注力しているのが、「手間をかけなくても農地を維持すること」だ。耕作放棄地になってしまうと、そこに雑草などが生えることで、鳥獣の絶好の隠れ場所になる。また、笹など根の強い植物が繁殖すると、農地に戻すことも難しくなる。
そこで、耕作放棄地で「ノブドウ」の栽培をはじめた。この植物は、田んぼなどと違い、手間をかけずに栽培することができるという。この収穫したノブドウを焼酎付けにしてエキスを飲用や傷薬として使えるようにした。実は、もともとこの地域に伝わる製法なのだが「こんなに簡単なら、やってみよう」と、他の住民に思ってもらうことが狙いだ。「将来的には事業にすることができたら」と、屋比久さんたちは夢を膨らませる。
バッドシナリオを考えて悲観的になるのではなく、そこから現実的にできることを考える。畦畑集落の取り組みは、多くの過疎集落にも参考となるはずだ。