2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月13日

 中国とロシアの関係は固定的ではなく、過去2年間の出来事に影響を受けてきた。鋭敏な観察者は、中国のロシアへのスタンスは戦争前の2022年の「無制限」なものから、伝統的な「非同盟、非対立、そして第三国を標的にしない」原則に戻ったと指摘する。

 中国は西側の対露制裁には加わらなかったが、そうした制裁に組織的に違反はしなかった。

 戦争が始まってから、中国は2つの外交的仲裁を行った。成功はしなかったが、中国がこの残忍な戦争を交渉によって終わらせるよう願っていることは何人も疑うべきではない。

 このことは、中国とロシアは非常に異なることを示している。ロシアは既存の国際的・地域的秩序を戦争という手段によって覆そうとしているが、中国は紛争の平和的解決を願っている。

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中国でウクライナ側の記事が出た理由

 筆者の馮玉軍は北京大学教授と紹介されているが、現職は上海の復旦大学国際問題研究院副院長の方がメインのようであり、また1994年から2016年まで国家安全部系列の中国現代国際関係研究院に籍を置き、ロシア研究所所長を勤めている。

 現在でもネット空間においては、ロシアには甘く、ウクライナには厳し目の言論統制が続いているようであり、筆者の見解は、この意味では傍流である。またここまで大胆な見解も稀有だ。

 ただ、ウクライナの立場に立ったネット上の情報は、一定の制限は受けつつも禁止されてはいない。これはロシア・ウクライナ問題に対する中国の基本政策が、意識的にどっちつかずのものにしてあることに起因する。

 そのこともあり22年に言論NPOが中国側と共同で行った世論調査の結果は、半分以上の中国人が、今回の戦争はロシアに責任があると見ているというものだった。もちろん中国人のロシア人嫌い、あるいはそれまでの中国とウクライナの良好な関係も、反ロシアに世論が傾く原因であっただろう。


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