ロシア専門家の馮玉軍北京大学教授がエコノミスト誌4月13日号に寄稿(‘Russia is sure to lose in Ukraine, reckons a Chinese expert on Russia’)、戦争によって国際的秩序を変えようとするロシアと違い、中国は紛争の平和的解決を願っており、中露関係はウクライナ戦争によって後退した、と述べている。要旨は次の通り。
この戦争でウクライナは膨大な犠牲を強いられたが、その抵抗の強さと結束力は、ロシアは軍事的に無敵との神話を粉砕した。ウクライナは灰塵から復活するかもしれない。戦争が終わった時、ウクライナは欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)への加盟の可能性を期待できる。
他方、この戦争はロシアにとって一大転機だ。戦争でプーチン政権は国際的孤立に追いやられた。
また、プーチンは厄介な国内の政治的混乱にも対処しなければならなかった。これらはロシアにおいて政治的リスクが非常に高いことを示している。
さらに、この戦争でますます多くの旧ソ連邦諸国がロシアの帝国主義的野心は自国の独立、主権、そして領土の保全を脅かすと確信した。ロシアの勝利は無理との認識が増す中、これらの国は、ロシアに依存しない経済成長政策やよりバランスの取れた外交政策の追求等により、モスクワと距離を置き始めている。その結果、ロシアが推奨するユーラシア統合の可能性は薄れた。
一方、欧州もロシアの軍事的侵略が欧州大陸の安全保障と国際的秩序に突きつける重大な脅威に気づき、冷戦後のEU=ロシア間の雪解けに終止符が打たれた。多くの欧州諸国がプーチンのロシアに対する幻想を捨てた。
NATOもマクロン仏大統領の言う「脳死状態」から覚醒した。大多数のNATO諸国は軍事支出を拡大、東欧におけるNATOの軍事配備も大幅に増強された。スウェーデンとフィンランドのNATO加盟は、プーチンがこの戦争を利用してNATO拡大を阻止することができなかったことを示している。