2024年6月17日(月)

BBC News

2024年5月24日

ドナルド・トランプ前米大統領(共和党)によるソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」のトランプ氏のアカウントに、ナチス・ドイツを想起させる「統一帝国(Unified Reich)」の創設という表現が出てくる動画が投稿された。民主党側が激しく批判し、トランプ氏側はこの投稿を削除した。

この動画は30秒ほどで、トランプ氏のアカウントに20日に投稿された。今秋の大統領選挙でホワイトハウス復帰を目指しているトランプ氏が復権した場合の、アメリカのビジョンを説明するとしていた。

その中には、トランプ氏の勝利を仮定した模擬新聞の見出しがいくつか出てきた。うち一つは、ナチス・ドイツを連想させる「統一帝国の創設」という言葉を含んでいた。1871年にドイツが一つの帝国(ライヒ、Reich)に統一された歴史をふまえた表現だったとみられる。

この動画は多くの報道と論争を呼び、のちに削除された。

トランプ氏の陣営は、この動画は「ランダムなアカウント」が作成したもので、投稿したスタッフは、問題の表現に気づかなかったと説明している。

動画の本当の出所は、「ディリー・ミーム・チーム」と呼ばれるオンライン・インフルエンサーの荒らし集団。トランプ氏を支持する動画や画像を大量に制作しており、下品、攻撃的、風刺的、陰謀論的な内容が多い。他方、伝統色が強く、宗教をテーマにしたものもある。

この集団がこれまで作ったものには、共和党指名候補を争ったニッキー・ヘイリー元国連大使を売春婦に、ロン・デサンティス・フロリダ州知事の妻ケイシー・デサンティス氏をポルノ女優に、ジョー・バイデン大統領を小児性加害者に、それぞれ見立てた動画がある。世界を支配しているという陰謀論に登場する「ディープ・ステート」に言及したり、連邦捜査官やワクチンに関する陰謀論を連想させたりするものもある。

バイデン氏がつまずいた場面をまとめたこの集団の動画などは、トランプ陣営のイベントで使われている。

米紙ニューヨーク・タイムズは昨年12月、「ディリー・ミーム・チーム」が作った動画についてトランプ氏が編集を提案し、それが取り入れられたと報じた。

誰がやっているのか

「ディリー・ミーム・チーム」のメンバーのほとんどは偽名を使っているが、グループ創設者のブレンデン・ディリー氏は実名でポッドキャストを運営している。同氏は自らを起業家、ライフコーチ、自己啓発作家、フィットネスの専門家だとしている。

ディリー氏は、トランプ氏に敵対的な人に暴言を吐いたり、ゲイの人を中傷したりすることが多い。BBCがコメントを求めたところ、侮辱とののしりの言葉が返ってきた。

トランプ陣営がディリー・ミーム・チームに資金を提供しているとうかがわせるものはない。逆に、ディリー氏と彼の会社が、トランプ氏側や共和党全国委員会に少なくとも7000ドルを寄付したことを、連邦選挙委員会の記録は示している。

ディリー氏やメンバーらは、トランプ氏関連の贈り物や、集会へのプレス許可証、トランプ氏の私邸があるマール・ア・ラーゴ・リゾートへの招待状などをもらったとし、陣営と親しいことを自慢している。

今回の「ライヒ」動画についてメディアが報じると、ディリー氏は自身のポッドキャストで、「公には話せない」ことがあると示唆。「これについては何一つ話せない」、「私はメディアで中傷されている」なとど話した。

BBCはトランプ陣営にコメントを求めている。

(英語記事 The pro-Trump ‘meme team’ behind video referencing ‘Reich’

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cw44xk4nz00o


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