2024年11月22日(金)

医療を変える「現場の力」

2013年12月12日

 そのほか、一日のスケジュールや、今後の意思決定支援として、延命措置についての本人の考えなども聞いておく。意思決定については、後から変わることも考えられるが、「そういう考えをご本人が持っていらしたことをご家族にも知っておいていただくことが大事」(片山さん)との考えからだ。

訪問することで分かること

 2013年度の国モデル事業(認知症初期集中支援チーム設置促進モデル事業)の採択を受けた世田谷区では、今年度の認知症初期集中支援チームの訪問活動を、訪問看護ステーションを併設している医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニックと、医療法人社団輝生会 在宅総合ケアセンター成城の2カ所に委託している。平成24年度から検討し、平成25年11月に策定した「世田谷区認知症在宅生活サポートセンター構想」のなかに、チームの機能を組み込んだ。

 区内27カ所ある地域包括支援センター(※2)に配置されている、認知症専門相談員に寄せられた認知症相談のうち、認知症初期集中支援チームによる支援が必要だと判断されたケースが、チームに依頼されることになる。

 この連絡を受け、チームでは認知症専門相談員やご家族から情報収集をしたうえで、医療と介護のチーム員が地域包括支援センター職員と一緒に、本人に会いに行く。

 訪問というスタイルになっているのは、次のような理由による。

 認知症は、「いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知障害があるために社会生活に支障をきたすようになった状態(※3)」である。つまり、生活の様子を見なければ、その人がどんなことに困っているのかが分かりにくいのだ。

 2012年度に行われた「認知症の初期集中支援サービスの構築に向けた基盤研究事業」の委員も務めた上野さんは「外来に来ていただく時は『よそゆき』なんです」と言う。よそゆきの状況では、たとえ日頃は何かに困ったり戸惑うことが多い人でも、しっかりした側面しか見えないこともある。

 それ以前に、認知症かもしれないと周りの人が感じていても、本人にその自覚がなかったり、医者嫌いだったりすると、多くは受診しようとしない。また、認知症というものに対する恐れや偏見により、相談を先延ばししてしまうこともある。やっと外来につながった時には、相当進行しているということがあるという。

※2:市町村や市町村から委託された法人が運営する、高齢者への総合的な生活支援や介護予防に関する相談の窓口となる機関。介護保険法に基づいて設置されている

※3:アルツハイマー病研究会の定義による


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