2024年12月6日(金)

医療を変える「現場の力」

2013年7月5日

 東京都世田谷区で在宅医療を展開している桜新町アーバンクリニック院長遠矢純一郎さんらの訪問診療では、診療の記録を必ずご本人や家族に渡している。また、了承を得た上で、その方に関わる医療、介護の担当者と共有もする。訪問看護ステーションやヘルパーステーション、訪問入浴、訪問リハビリが入っていればその担当者やケアマネジャーが、登録手続きをして必要な時に最新の情報を見ることができる仕組みだ。

移動中の車内で、すぐに診療情報を細かくボイスレコーダーに吹き込む。

 前回の冒頭で触れたように、診療後に医師がボイスレコーダーに吹き込んだ診療情報は、看護師資格を持ったスタッフによりテキスト化され、そのサマリーが当日中に専用のクラウドサーバーにアップされる。そこには常に3カ月以内の診療記録のサマリー、基本情報、処方の記録、そして病歴情報が1人につき1つのファイルにまとめられており、訪問のたびに更新されていく。連絡事項を書き込める部分もあり、連絡ノートのネット版のような感覚でも使える。

 これらは、人材も時間も限られた中で、医療や介護を提供する時間そのものを1分、1秒でも多く確保するのに有効だ。周囲の各事業所からは「情報を提供してくれるのでやりやすい」、「わざわざ取り寄せる手間なくアクセスできるのは便利」との声も多いという。

 ただ、医療用語や薬については、医療の専門職でないと理解できない部分があるため、必要に応じて看護師が説明をしている。

ICTの“いいとこ取り”

 このシステムは、地域の医療介護スタッフとの連携はもちろん、夜間や休日の対応にも威力を発揮する。「外にいるときにコールがあったとき、その人がどんな疾患でどんな薬を飲んでいるのか、直近の1~2週間どんな状態だったか、スマートフォンからアクセスして確認ができます」と、遠矢さん。

 ICTを駆使した在宅医療というと、訪問先でノートパソコンを開き画面に向かっている医師を想像してしまう。しかし遠矢さんたちのチームは、意外なことに利用者さん宅ではPCを開くことがない。


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