2024年11月6日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月17日

 6月4日付ウォールストリート・ジャーナル紙は「選挙がモディを戒める(An Election Rebuke for India’s Narendra Modi)」との社説を掲載し、選挙の結果が予想外にモディのBJP(インド人民党)に厳しいものとなったことの背景等を論じている。要旨は以下の通り。

インドの路上で眠る子どもたち( NurPhoto /gettyimages)

 6月4日夕方までの段階では、BJPの与党連合は543議席中290議席を獲得する勢いだった。しかしBJPの議席数は約240に落ち、2014年と19年の選挙で獲得した単独過半数には遠く及ばない。モディはBJPの議席を400議席まで伸ばしたいとしていたが、コングレス党主導の野党連合が230議席程度と、事前の予想と異なり議席を大きく伸ばした。

 インドでは経済問題がキャンペーンの主要議題だった。数億の人口を貧困から救い出すには急速な成長が不可欠だ。

 モディはしばしばビジネス優先と言われる。しかし国民はその成果がどこにあるか戸惑っている。

 公式の数値によれば、昨年国内総生産(GDP)は8%成長したが、それは、選挙民に将来への自信を与える民間消費や投資ではなく、政府支出に負うところが大きい。国全体の失業率は8%程度だが、都市部の若者の失業率は17%だ。

 モディの選挙活動の間違いの一つは、このような停滞から抜け出すためのビジョンを選挙民に示せなかったことだ。その代わりに彼は、コロナ期に導入されたような食料補助金等の説明をしつこく繰り返した。

 選挙民はそのようなバラマキ政策が将来の経済見通しを改善しないことを分かっている。モディの失敗は、インドが享受している自然な優位性を考えれば不可解だ。その優位性の一つは、多数の若く、ますます教育度が高くなっている国民で、その存在は中国以外に供給網を多様化しようとしている企業にとり魅力的なはずだ。

 もう一つ、予想したような効果を上げなかったのは、選挙戦術の重要な要素になっていた、ヒンズー・ナショナリズムに訴える手法だ。複雑で時に暴力的な民族間、宗教間紛争が多発する国では、宗派的メッセージは選挙結果を変える力を持つ。


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