キャサリン・タイ米通商代表が、5月28日付フィナンシャル・タイムズ(FT)紙への寄稿‘Trade must transform its role in the social contract’で、社会契約の中での貿易の役割を転換すべきだ、データ保護から労働者の権利に至るまで経済機会を民主化する必要がある、と述べている。主要点は次の通り。
パンデミックがピークの時、FT紙は「全ての人々に利益をもたらす新しい社会契約」と「過去40年間の政策の方向性を逆転させるための急進的な改革」が必要だと述べ、第二次世界大戦の最中に大西洋憲章とブレトンウッズ会議が示したように、今の指導者は平和を勝ち取るために行動しなければならないと指摘した。
経済政策の不可欠な一部として、貿易もまた社会契約の一部であるべきだ。貿易も変革する必要がある。
それには1941年の大西洋憲章が指針になる。それは「全ての人々のために労働基準の向上、進歩、社会保障を確保することを目的として、国際経済協力を追求する」と述べ、経済政策が労働者の利益に奉仕することを求めている。
貿易政策は、過去40年間トリクルダウンのアプローチを踏襲してきた。しかし、市場に委ねることが国内経済政策の労働者への利益をもたらすことに限界があることを認識するなら、貿易に関しても同様に限界があると認めねばならない。
レッセフェール(自由放任主義)のシステムは、短期的利益追求型の企業の利益最大化を可能にし、しばしば非市場的な独裁国家と提携してその目標を達成してきた。利益と経営者報酬が急上昇する一方で、労働者は取り残された。
一方、生産の集中は中国のような国の独占的な行動を助長した。米国経済は今も開かれた経済であり続けているが、米国の労働者はそれにより害を受けている。
貿易政策が民主的な責任から分離されたまま、地域社会は壊滅的な影響を受けてきた。これが、バイデン政権の貿易政策が経済機会の民主化をしようとする理由だ。
われわれは人々の経験を引き出して、その強靭力を支援すべく貿易ルールを最適にしようとしている。米通商代表部(USTR)は、モノの移動を超えて、より多くの人が経済機会と正義にアクセスできるようにシステムを再構成する。