2024年11月23日(土)

Wedge REPORT

2024年6月29日

 事実、投票システムの開発や運営などを手掛けるVOTE FOR(東京都港区)の調査では「インターネット投票の導入」に対する期待は10代、20代の若年層よりも50代以上の方が高いという結果も出ている。

 前出の河村准教授は「インターネット投票は投票権を保障する観点では導入すべきだ。ただ、若者の投票習慣を定着させるほどの効果があるかは未知数」と話す。投票環境の向上が若者の政治参加を促進する可能性は大いにあり、試行錯誤も含めたこうした取り組みは継続すべきだ。

 一方、取材に応じた関係者が口々に語ったのは「政治への関心を高める必要性」だ。内閣府の調査によれば、日本の若者は自国社会に不満を持つ割合が高いにもかかわらず、政治に対する関心は低い(下図)。こうした背景について前出の小山教授は「不景気の慢性化や国力の衰退が日々喧伝される中で将来に希望が持てず、諦念すら抱いている可能性がある」と語る。

日本の若者は自国社会に対する
満足度が低く、政治への関心も薄い

(出所)内閣府『令和元年版 子供·若者白書 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~』を基にウェッジ作成
(注)四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある 写真を拡大

 各地のさまざまな創意工夫は、政治への関心を高める契機になるだろう。だが、これらはあくまでも「手段」であり、より根本的な取り組みが必要だ。

 鍵を握るものの一つが「未来の有権者」を抱える教育現場だ。総務省が任命する主権者教育アドバイザーも務める浦和大学の林大介准教授は「政治的中立性を担保しつつ主権者教育を行うのは難しいが、だからといって教育現場で政治に関する教育をしないのは無責任だ」と語気を強める。コロナ禍における休校の実施やワクチン関連の議論など、自分自身に直接関わることであっても、そのほとんどは政治によって決まるからだ。

 ただ、全てを教育機関に委ねるのは負担が大きい。同氏は「市議会議員など地域にとって身近な政治家が超党派の委員会単位で教育現場を訪問し交流するなど、政治的中立性に対する発想を変えた政治家側からのアプローチがあってもいいのではないか。親が政治の話をすることも有効だ。日本では政治を話題にするハードルが高いが、子どもが政治を身近に感じるために親が果たす役割は大きい」と強調する。

 普段、政治とは無縁の話しかしない学生が、主権者教育の中では意外と真面目に街の未来や日本の政治への考えを口にする場面が珍しくないという。学生間ではそうした刺激による相乗効果が生まれ、家庭では親が子どもの成長を感じる機会にもなるだろう。

 他者に思いを巡らせることも大切だ。25年間で4万人以上の学生を議員事務所や各国公館にインターンシップで派遣したドットジェイピー(東京都千代田区)の佐藤大吾理事長は「若者は理想主義がゆえに現実や歴史を軽んじてしまうことも多いため、年長者の経験は尊重されるべきだ。一方、将来を見据えた長期政策の中には若者の感性や危機感を優先すべきこともある。お互いに歩み寄る意識が必要だ」と語る。

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