2024年11月22日(金)

デジタル時代の経営・安全保障学

2024年7月5日

 日本政府や自治体はデータセンターを誘致するためにさまざまな助成措置が取られている。GDSのデータセンターにも固定資産税の減免措置やエネルギー効率の高い設備、通信、電力に対する補助が行われる可能性がある。

 すでにアリババが個人や中小企業をターゲットにしたクラウドサービス事業で、騰訊控股(テンセント)がオンラインゲームや対話アプリのWeChat、ライブ配信事業で日本にデータセンターを開設しており、これらの優遇措置が取られている。加えて中国のデータセンター事業者は華為技術(ファーウェイ)などの安い中国製IT製品を使用しているため価格競争力が抜群に強い。例えば日本の農業を効率化するなどの新興のベンチャー企業は、中国系のデータセンターやクラウドサービスを利用する例が多くなることも予想される。

日本国内に敵基地を作るようなもの

 対話型AI(人工知能)のChatGPTで知られる米OpenAI社は7月9日、中国からのアクセスをブロックした。大規模言語モデル(LLM)を使用してAIを開発する中国の新興企業は、この日本に建設されるデータセンターを利用して、OpenAI社が提供するサービスにアクセスすることになるだろう。アクセスのブロックも役に立たず、ノウハウの流出には、歯止めがかからない。

データセンターからは、さまざまな情報が窃取されてしまう(Andrey Semenov/gettyimages)

 中国にデータを流す方法が、曖昧な利用者との合意に基づく間接的方法のほかにも出てきたということだ。中国系データセンターの利用は、セキュリティの遠隔監視と称する手口やIT機器の瑕疵(バグ)を装った手口などさまざまに存在するため、データセンターという密室でのデータ窃盗行為は発覚しない。

 中国のデータセンターのわが国への進出は、経済安全保障の観点から重要な問題をはらんでいるといえる。全ての中国国民はスパイ活動に従事しなければならないとする「国家情報法」があるのはご存知の通りだが、それ以前に中国の企業幹部のほとんどは、中国共産に忠誠を誓った共産党員であることを忘れてはならない。日本政府は中国のデータセンター建設を阻止する政策をとるべきではないだろうか。

 サイバーディフェンスの観点から見れば国内に敵基地を作られたようなものだ。

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