通貨安とセットで評価したい株高
3月時点では日経平均株価が史上初の4万円台に到達した3月4日時点における過去12カ月間に関し、株価指数の上昇率トップ10を並べて国際比較した。その際は首位のアルゼンチンを筆頭に高インフレと通貨安に悩む新興国がずらりと並び、10位に日本が滑り込んでくるという相応にショッキングな絵図が確認された。
今回は今次円安局面の始まった2022年3月を起点として24年7月9日時点までのパフォーマンスを比較してみた(図表①)。株価上昇率に関し、首位のアルゼンチンは変わらずで、これにトルコやエジプト、アフリカや中東欧など、やはり新興国グループに属する国々が続いている。
この中で日経平均株価は15位、TOPIXは17位に入っており、やはり明らかに異質である。通貨下落率を見ても、アルゼンチンやトルコと比べればまだ抑制されているが、それ以外の国々と比べれば見れば遜色ない幅と言える。
唯一、日本より上位に位置し、先進国グループに属する国としてデンマークがあり、株価上昇率では13位に位置している。しかし、同国は欧州時価総額首位の製薬大手企業を擁し、21年6月には同社の開発した肥満症治療薬がアメリカ食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の承認を得たことも話題となった。OMXコペンハーゲン20指数で最大のウェイトを有するのが同企業である。
何より表中の通貨変動率を見ても分かる通り、ユーロや一部の管理通貨(カザフスタン・テンゲ)を除けば、デンマーククローネは明らかに安定しており、同国が欧州連合(EU)でもインフレ率の安定した国として知られることを思えば、OMXコペンハーゲン20指数の上昇は周囲の国々とはまた違った目線で評価すべきであろうことは察しが付く。
このほかトップ30まで拡げれば25位にイタリア、27位に台湾、28位にスペイン、29位にドイツ、31位にオランダなど先進国グループと呼べそうな国々も入ってくる。ちなみに33位は米国(S&P500指数)だ。
これらの国・地域について対象期間で言えば、ユーロは▲2.8%、台湾ドルは▲13.9%であった。世界的に地政学リスクの高まりが意識される中、台湾ドルの下落幅は非常に大きいが、それでも円の下落幅の半分以下だ。株価上昇率と通貨下落率のバランスを見る限り、日本について自信を持って「先進国グループの一員」と言うにはやや躊躇する面もある。
上位陣はスタグフレーションの容疑濃厚
図表①における上位陣は高インフレと通貨安が相まって実質所得環境が悪化し、実質消費が停滞している国が多い。端的に言えば、スタグフレーションかそれに近い症状を患っている国々だ。
例えば22~23年のインフレ率を見ると、多くの国は2ケタに達しており、中には3ケタの国すら見られる。こうした中、日本のインフレ率は非常に抑制されているケース(+2.8%)だが、00年から21年までの平均が+0.09%であったという経緯を踏まえる必要がある。
その状況から22年が+2.50%、23年が+3.27%(2024年IMF予測が+2.24%)と明らかに段差のある変化に直面している。「デフレの終焉、インフレの始まり」と解釈するのも無理からぬ状況と言えるだろう。