2024年7月19日(金)

BBC News

2024年7月19日

アメリカのドナルド・トランプ前大統領が銃撃された事件で、容疑者が発砲する20分ほど前に、距離計を使っている不審な人物がいるとして、警察の狙撃手が大統領警護隊(シークレットサービス)に注意を喚起していたとされることが明らかになった。警察から説明を受けた連邦議会議員らが話した。

警察による議員団への説明は、17日に非公開で実施された。

その中で、13日に事件が起きたペンシルヴェニア州の集会に関して、現地で不審な行動をしていたトマス・マシュー・クルックス容疑者(20)の存在に地元警察が最初に気づいたのは、銃撃の約1時間前だったという説明があった。警察は群衆の中でこの人物を見失い、のちに狙撃手が再び発見したという。

この新情報を受けて、なぜもっと早く銃撃を阻止できかったのか、なぜ前大統領の登壇が許されたのか――などの疑問が強まっている。

議員らの話では、地元警察はシークレットサービスなど他の警備当局に、クルックス容疑者について無線で通知した。当時、容疑者は武器を持っているようには見えなかったという。その後、警察は彼を見失った。

警察から説明を受けたジョン・バラッソ上院議員(ワイオミング州選出)は米FOXニュースに、「彼はバックパックの他に距離計も持っていたため、不審人物とされた。銃撃が起こる1時間以上前だった」、「その1時間でこの人物を見失ってはいけないはずだ」と話した。

警察は午後5時45分ごろ、クルックス容疑者がのちに銃撃のためによじ登る建物の近くで、同容疑者を再び発見した。

BBCが提携する米CBSニュースによると、距離計をのぞく容疑者の写真を警官が撮影し、すぐに指揮本部に無線で報告した。

シークレットサービスは午後5時52分(銃撃の19分前)までに、距離計を持つ容疑者を確認し、現場の他の担当官らに伝えたという。

警察の説明を知る立場の当局者がCBSに語ったところでは、暗殺未遂事件の数日前までに容疑者が少なくとも1回、現場のバトラー郡の会場を訪れていたと、議員に説明された。また、容疑者がかつて、うつ病性障害について携帯電話で検索していたという説明もあったという。

容疑者がトランプ前大統領とジョー・バイデン大統領の画像も携帯電話で検索していたとの説明もされたという。

一方、連邦捜査局(FBI)のクリス・レイ長官は議員らとの電話会議で、すでに200人以上に事情を聴き、1万4000枚の画像を検証したと話したという。また、銃撃の動機はまだ特定されていないと述べたという。

クルックス容疑者は午後6時11分、演説を始めて間もないトランプ前大統領に向けて発砲した。この銃撃で集会参加者1人が死亡、2人が負傷した。前大統領は耳にけがを負った。

容疑者は発砲から26秒以内に、シークレットサービスの狙撃手によって射殺された。

警察の説明の際、共和党の複数の上院議員は、捜査当局の透明性の欠如を批判するとともに、脅威を認識した後もトランプ前大統領の登壇を許したことへの怒りをあらわにしたという。

また、何人かの上院議員は、シークレットサービスのキンバリー・チートル長官の辞任を要求したという。

ミッチ・マコネル上院院内総務(共和党)は電話会議後、「国民は答えと説明責任に値する」とし、シークレットサービスの指導部の交代は「その方向での重要な一歩」になると述べた。

シークレットサービスで27年勤めるチートル長官は来週、共和党が支配する下院の二つの委員会で証言する予定。

チートル長官はこれまでに、容疑者が銃器を持って登った建物の警備は地元警察に頼っていたと話している。

しかし、バトラー郡のリチャード・ゴールディンガー地方検事によると、地元警察はシークレットサービスに対し、建物を警備するだけの資源がないと伝えていたという。

地元当局がCBSに語ったところでは、地元の警官が襲撃事件の直前、建物の屋上で容疑者と対面していたという。

その警官は不審者の連絡を受け、捜索に当たっていた。建物の屋上に上がると、容疑者に直接銃器を向けられた。警官は「無防備」な状態で、地面に落下した。他の警官に容疑者について知らせて間もなく、銃撃が始まったという。

銃撃までの時系列

・午後5時11分ごろ: 地元警察がクルックス容疑者に気づき他の捜査当局に連絡するものの、行方を見失う(連邦議会議員団への警察説明より)

・午後5時45分: 警察の狙撃手が、集会会場近くの建物周辺で不審な行動をしている男性について、写真と共に報告。これが結果的に、クルックス容疑者だった(地元報道より)

・午後5時52分: シークレットサービスが、地上で距離計を持つ不審人物に気づく(議員団への説明内容を知る消息筋より)

・午後6時3分: トランプ前大統領が演説を開始

・午後6時9分ごろ: 前大統領の演台から約130メートル離れた建物の屋根の上にいるクルックス容疑者に、集会参加者たちが気づき、捜査当局に知らせようとする

・午後6時11分: クルックス容疑者が発砲。26秒後、シークレットサービスの狙撃手に射殺される

(英語記事 Trump gunman flagged by Secret Service 20 minutes before shooting

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c6p2l2l0djvo


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