もう一つは、2軍の拠点がエスコンフィールドの近郊に移れば、シーズン中の1、2軍選手の入れ替えをスムーズに行うことが可能になる点だ。1軍で出場機会が少ない選手が実戦機会を確保するため、デーゲームで2軍戦に出場し、ナイターで1軍のベンチへ入るという、いわゆる「親子ゲーム」が他球団のように行いやすくなる。
移転への壁
一方で、課題もある。新球場建設などのコスト面と、日本ハムとの2軍戦で他球団の遠征にかかる移動コストが膨れ上がる点だ。
北海道新聞によれば、新球場を検討した構想では、球場の隣接地に寮と室内練習場の建設も想定する。鎌ケ谷スタジアムのような屋根とナイター設備は設置しないが、建設費は数十億円から100億円程度になる見込みだという。
そこで、球団は、移転先の地元自治体が球場を建設し、球団が運営を担う「公設民営型」を想定しているという。建設の主体は「公」、誘致するのは自治体というスタイルだ。一方で、鎌ケ谷スタジアムの建て替えの可能性も残っているという。
日本ハムは総工費約600億円をかけて、札幌ドームからエスコンフィールドへ移転したが、このときは、誘致した北広島市は土地を無償で貸し付け、固定資産税と都市計画税も10年間免除するなどの優遇策を打ち出した。
本拠地となった北広島市は地価が急上昇するなど、地域活性への道筋ができた。
対照的なのは、本拠地を手放した札幌市だ。日本ハムは札幌ドーム側とも何度も使用料や広告収入などの条件面での協議を続けたが、交渉はまとまらなかった。日本ハムの試合が収入の3割を占めていたため、収入の柱を失った市の第三セクターが運営管理する札幌ドームの2024年3月期決算は、純損益が6億5100万円の赤字。明暗がくっきりと分かれた。
一方で、他球団の負担増も高いハードルとなる。
プロ野球の2軍戦は、1軍のセ・パのリーグには分かれず、拠点を置く地域で東西(日本ハムが所属するイースタン・リーグとウエスタン・リーグ)に分かれて実施する。
プロ野球にとって、2軍は収益を見込む「興行」よりも「選手育成」の場としての位置づけが色濃い。このため、各球団はできるだけ運営コストをかけたくないため、遠征時の移動費用が少ないようにリーグを編成している。
イースタン・リーグは現在、日本ハムのほかに、巨人、ヤクルト、DeNA、西武、ロッテ、楽天、1軍がないオイシックスの8球団。東北に拠点を置く楽天と、新潟のオイシックスを除く6球団は現状すべて関東近郊に本拠地があり、全球団が陸路での移動が可能だ。
しかし、北海道となれば、飛行機での移動となって負担増は避けられない。遠征時の移動費はそれぞれの球団が負担しており、北海道への遠征による費用負担の増大には、他球団の理解が必要になる。