2024年7月25日(木)

勝負の分かれ目

2024年7月25日

地域にとっては貴重な「資源」

 日本ハムは、「スカウティング」と「育成」をチーム強化の柱に掲げてきた。

 ドラフト会議では「その年の一番高い評価の選手」の指名にこだわり、ダルビッシュ投手、3度の打点王に輝いた中田翔選手(現中日)らを獲得。高校卒業後に渡米を見据えていた大谷選手の指名にも踏み切った。

 下位指名の選手も含め、入団後の育成がチーム強化の鍵を握るため、いち早く試合の分析やスカウト活動、選手の査定、トレーナーによる情報などを統括するITシステム「ベースボール・オペレーション・システム(BOS)」を導入し、2軍戦で出場機会を与えて成長と評価を定めていく。新たな若手を次々に台頭させる循環を生み、1軍で活躍した選手にはメジャー挑戦の理解も深く、ポスティングシステムでの移籍を容認している。

 チーム強化の重要な役割を担う2軍の本拠地となる自治体は、鎌ケ谷市がそうであるように、チームにとっては重要なパートナーとなる。

 その鎌ケ谷では移転検討の報道に困惑が広がり、一方で候補地に挙がった北海道の自治体からは歓迎ムードが起きる。

 千葉日報によれば、球団と連携して地域活性化や魅力発信に努めてきた市は今年4月、商工観光課内に新たにファイターズファーム連携推進室を設置したばかりだという。芝田裕美市長は同紙の取材に「大変驚いている。今年度、積極的に応援に取り組んでいるさなか。具体化したものではないと認識している。(鎌ケ谷への)存続を求めたい」と話した。一方、北海道の地元メディアは、恵庭市や千歳市などの住民から移転実現を願う声を紹介している。

 拠点施設の老朽化と1、2軍の入れ替えをスムーズに行いたいという日本ハムの移転検討の狙いが明確となり、課題は、他球団の理解に加え、鎌ケ谷市が老朽化したスタジアムにどう向き合うか、候補に挙がっている北海道の自治体にも「公設民営型」の新球場建設に本腰を入れて検討するには財源の確保が必要となる。2軍とはいえ、本拠地を持つことは自治体にとっては貴重な「地域資源」となりうる。

 この価値と本拠地誘致に必要な財源をどう天秤にかけるか。現時点では残留の可能性もあるという鎌ケ谷市、そして、移転先の候補地に挙がっている自治体が誘致を実現するには、日本ハムとのシビアな交渉も予想される。

 札幌ドームという拠点を出て、ゼロからボールパークを立ち上げた日本ハムの「実行力」を前に、2軍本拠地をめぐる「綱引き」が本格化しそうだ。

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