2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月29日

 この本の宣伝で、バンスはトランプをヘロインの一回分になぞらえ(「苦痛からの簡単な逃避」)、トランプを日常的に蔑んでいた。彼は2016年7月にはトランプは「実質的な裏付けを欠いたまま偉大さについてのスローガンを提供している」と Wワシントン・ポスト紙に書いた。

 しかし、バンスは進路を変えた。彼は、社会問題については保守、経済については非リベラルと自身を位置付けた。彼はビッグ・ビジネスの力を非難し、反トラスト法の強力な実行を支持している。

 最近、バンスは、彼が2021年1月6日に副大統領であったならペンスがやったようには 2020 年選挙を認証することはしなかったであろうと述べた。今月、彼はバイデンと彼の家族を「訴追するための本当の特別検察官」を任命するとのトランプの約束を擁護した。

 バンスは公務員を一掃すること、そして最高裁がこれを違法とするのなら最高裁を無視することを提案した。7月13日、バンスはバイデンの選挙戦のレトリックが「トランプ大統領の暗殺未遂を直接的に引き起こした」と書いた。

 バンスの指名が共和党の正統性からの重要な転換を画するものであることは間違いない。

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トランプ主義者として選ばれたか?

 バンスは才能に恵まれ賢い人物のようである。しかし、彼は、自分は「never Trump guy」だと言っていたことがある。トランプは「アメリカのヒットラー」かも知れないと思ったこともある。トランプ主義は「文化的ヘロイン」だと断じたこともある。

 彼はその後トランプ主義に改宗した訳であり、オポチュニスト(ご都合主義者)のようである。自分が 2021年1月6日に副大統領であったならペンスがやったようには 2020年選挙を認証することはしなかったであろうと述べるなど、トランプに恭順であることが彼の将来を拓くと思っているに違いない。バイデンは彼をトランプのクローンだと評した。

 副大統領候補を選択する基準はトランプに忠実なトランプ主義者であることだけではない筈はずであるが、それが唯一の基準であった如く見える。


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