2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月2日

 が、言い方は別にして、欧州のコミットメント未達成への懸念は、トルーマン以降、共和党・民主党を問わず歴代米国大統領が一貫して持ってきた問題意識だ。そして、第二次世界大戦終了後3年半足らずの時期で、冷戦が華やかなりし時代に、既にこのような点を指摘しなければならないような状況(緊張感の弛緩)が起こっていたと言いうのは、大いに興味深い。

 換言すれば、冷戦が米国の勝利で終わってから35年経った今、我々われわれの危機意識が緩んでいるのは、ある程度止むを得ないことかもしれない。

集団安全保障措置を補完

 もう一つ面白いのは、NATOを国連との関係で論じていることだ。この社説は、NATOの創設を「国連の考え方が人々の心と政治家の計算に脈々と生きていることを示すものだ」としている。また、「国連が失敗した訳では無く、各国がこの機関を作るに際して語ったことを実現できていないだけだ」とも言う。これはその通りである。

 国連憲章は、武力行使の一般的禁止と言いう一大転換を行う一方で、各国の安全は、当初は個別的・集団的自衛権の行使で守り、その後は、加盟国が団結して提供することが期待される集団安全保障措置により担保されるというのが基本的考え方だ。が、その意味で、NATOは(地域を限った)集団安全保障措置であり、本格的な国連の集団安全保障措置の発動に不可欠な安全保障理事会の機能が既に当時から麻痺しがちだったことに鑑み、限られた形の有志連合で、集団安全保障措置を補完する枠組みを作ったのが NATOだということなのだろう。

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