2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月22日

 ストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長がワシントン・サミットを前に論文を掲載し、ロシアによるクリミア併合後のNATOの変遷等に触れた上で、欧州とアジアの安全保障が密接に影響し合うことを指摘して、「インド太平洋4」(日本、豪州、韓国、ニュージーランド〈NZ〉)との関係を深化させる方針を2024年7月3日付フォーリン・アフェアーズ誌で述べている。

米のジョー・バイデン大統領(左)とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領(AP/アフロ)

 今日、北大西洋の安全保障は危機に瀕している。ウクライナ侵攻を開始したロシアは戦争をエスカレートさせ、ウクライナ攻撃のみならず、NATO諸国に対する破壊活動やサイバー攻撃、偽情報等の敵対行為を組織的に行い、さらに核の威嚇を続けている。

 攻撃を防ぐ最良の方法は抑止の信頼性を維持し強固な防衛力をもつことである。換言すれば、平和を維持する最良の方法は戦争の準備をすることなのである。

 冷戦の終結により欧州の緊張は低下したが、14年という年はNATOにとって転換点になった。ロシアによる違法なクリミア併合等を受け、NATOはその焦点を、同盟の対象地域外における活動から、抑止と防衛という同盟の核心的課題にシフトさせた。

 NATOはまた中国との競争に耐えられる力をつけてきた。有害なまでの依存度を下げ、重要インフラ、戦略物資及び供給網を守ってきた。NATO各国はまた、安全保障への投資を増大させ、本年、23カ国の防衛費が対国内総生産(GDP)比2%を上回った。

 ロシアの侵攻以降、NATO諸国はウクライナに多大な軍事援助を供与した。NATO諸国は、米国による600億ドルを超える支援を含め次々と新たな支援を発表した。が、ウクライナの勝利のためには、NATOはより多く、より迅速に支援する必要がある。

 そのためワシントン・サミットでは、安全保障面の支援と訓練にかかる調整をNATOが主導することにつき合意するだろう。これによって米国の負担を低くすることが可能になる。


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