サミットではもう一つ、ウクライナに対する財政支援についても合意できると期待している。ウクライナへの支援が強固であれば、この戦争の終結も早まるだろう。
最後に、ワシントン・サミットではグローバル・パートナー、特にインド太平洋のパートナー諸国との関係を深化させるだろう。サミットに豪州、日本、NZ,韓国の指導者を招待するのは三度目になる。われわれは将来にわたってこれら諸国とともに権威主義に立ち向かい、民主主義的価値を守る。われわれはウクライナ関連の主要なプロジェクト、サイバー、偽情報、新技術及び防衛産業を通じた実践的な協力を積み重ねていく。
中国は、半導体等ロシアが戦争を続ける上で不可欠な支援を提供し、紛争に油を注いでいる。同時に、西側と良い顔をし、制裁を避けて貿易を続けようとしている。しかし、いずれかの段階で、中国はコストを払わなければならなくなるだろう。
ワシントン・サミットはNATOにその団結と決意を示す機会を提供する。プーチンと習近平はNATOに断固として反対しているが、それはNATOが、彼らが最も恐れるもの、すなわち自らの運命を選択する自由を体現しているからである。
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再び創設時の役割に焦点
ストルテンベルグは、ロシアによるクリミア併合から本年に至るまでの10年間に亘りNATO事務総長を務め、この10月にルッテ前オランダ首相に交代する。
ストルテンベルグが長期にわたって事務総長を務めなければならなかったのはロシアが再びNATOの最大の脅威として復活してきたからである。75年振りに創設の地ワシントンで開催される本年のサミットは、正に創設時の役割に再び焦点があてられた。
本論文はワシントン・サミットの主要議題として、① NATOの防衛・抑止力強化、②ウクライナ支援、③グローバル・パートナーとの協力の3点を挙げ、NATOが直面する課題とその対応の概要を説明している。夫々につき、若干のコメントを試みたい。
第一のNATOの防衛・抑止力強化については、今日のNATOは、欧州における大規模な地上戦という、第二次世界大戦後初めての事態に直面している。NATOは今や、地域紛争への「人道的介入」やテロ等との闘いよりも、創設時のように、まず自分たちの領土を侵略から守るという集団防衛機構の核心的役割に焦点を当てなければならなくなった。
NATOは既に予算、部隊編成や訓練のあり方等多くの改編を遂げつつある。ただその背景の一つには、これまでのような米国の関与が今後は期待できないかも知れないという切迫感がある。