2024年11月22日(金)

2024年米大統領選挙への道

2024年8月1日

「重罪犯」「詐欺師」「性的暴行者」の3点セット

 ハリス副大統領は、トランプ前大統領を「自由の抑圧者」のイメージの植え付けをやりたいのだが、それよりもすでに暴かれた事実に基づいた攻撃がある。

 トランプ前大統領は、ニューヨーク地裁における元不倫相手への口止め料を巡る裁判で、12人の陪審員が全員34の罪に有罪の評決を下すことによって、「既決重罪犯(convicted felon)」になった。

 バイデン大統領が7月21日(現地時間)、選挙戦からの撤退を自身のXで発表すると、翌22日民主党のベテラン下院議員のジェリー・コノリー氏(南部バージニア州)は、支持者にメールを送り、ハリス副大統領の下で同党がまとまることが重要であると強調し、ハリス氏支持を逸早く表明した。さらに、コノリー議員は、同じメールでハリス氏とトランプ氏が対戦すれば、「検事対重罪犯」のコントラストが鮮明になると指摘した。

 元検事のハリス副大統領は、トランプ前大統領の重罪犯のみならず、トランプ大学におけるオンライン講座の授業料詐欺や、元女性作家に対する性的暴行で賠償金を命ぜられた件など、過去の事件を掘り起こして追及していく構えだ。

 つまり、ハリス副大統領は残り98日間の選挙戦で、トランプ前大統領を「重罪犯」「詐欺師」および「性的暴行者」として描く戦略に出る。

 このハリス副大統領の選挙戦略に関して、トランプ支持者は憤慨し、結束を固めるかもしれないが、この戦略は民主党支持者や民主党寄りの無党派層および鍵を握る郊外に住む女性に、バイデン大統領が与えることができなかった留飲を下げる効果がある。

 さらに、トランプ前大統領を「重罪犯」「詐欺師」および「性的暴行者」に描くことに成功すれば、今回の共和党全国大会に参加しなかったマイク・ペンス前副大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領、ディック・チェイニー元副大統領並びに2012年米大統領選挙における共和党大統領候補であったミット・ロムニー上院議員(西部ユタ州)等、共和党穏健派の票を得られるかもしれない。

DEI候補と「DEI採用」

 これに対して、トランプ前大統領とMAGA共和党はどのように対抗していくのだろうか。

 米有力紙ワシントン・ポストによれば、議会共和党下院に向けて、これまでハリス副大統領を批判する際に用いた「DEI候補」や「DEI採用」を使用しないように党幹部から指示が出たという。議会共和党は、これまで黒人女性のハリス副大統領は、自分の実力ではなく、DEI政策のお陰で選ばれた候補と難癖を付けてきた。「D」は多様性(diversity)、「E」は平(equality)、「I」は包摂(inclusion)を指す。共和党幹部は、この用語とハリス副大統領への「言いがかり」が共和党への批判となって返ってくることを恐れたのである。

 しかし、共和党がハリス副大統領の人種やジェンダーへの攻撃を控えても、トランプ前大統領は支持基盤を構成する白人至上主義者や白人労働者の結束を高めるために、人種およびジェンダーを利用するかもしれない。

 トランプ氏の伴走者であるJ.D.バンス副大統領候補は、2021年に米FOXニュースとのインタビューの中で、「子供のいない猫好きの女性たち」と発言したことに関して、目下、集中砲火を受けている。

 米ABCニュースと調査会社イプソスの共同世論調査(2024年7月26~27日実施)によれば、バンス氏の好感度は、「好感が持てる」が24%、「好感が持てない」が39%で、「非好感度」が15ポイントも上回った。前回の調査(同月19~20日)と比較すると、「好感が持てない」が8ポイント上昇した。

 しかも、バンス副大統領候補に対して「意見がない」と「分からない」の合計は、36%であった。この数字は取りも直さず、彼の知名度の低さを示している。


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