2024年8月6日(火)

BBC News

2024年8月6日

ダニエル・デ・シモーニ、事件担当編集委員

イギリス各地で1週間近く続く騒乱について、 かつてロンドン警視庁でイギリスのテロ対策を統括したニール・バス元副総監は5日、一部の暴力行為は「一線を越えてテロリズムの領域に達した」とBBCに話した。

2018年から2021年にかけて、ロンドン警視庁のテロ対策本部長を務めたニール・バス氏は、「私の後任たちには、そこに注視してもらいたい」と述べた。

「私たちが目にしているのは、この国のコミュニティーの一部に恐怖をもたらすことを意図した、深刻な暴力行為だと思う」と元副総監は話した。

そして、先週から続く暴力行為や行動の一部について考える際は、テロリズムの法的定義について「非常に注意深く検討すべきだ」とした。

現在の一連の暴力行為についてバス氏は、「ソーシャルメディアを通じて拡散されたうそ」がきっかけになったと指摘。「そのことについて、何かしら対応が必要だ」と述べた。

ソーシャルメディア「X」(旧ツイッター)上では、極右活動家のトミー・ロビンソン(本名スティーヴン・ヤクスリー=レノン)元受刑者が週末の間、何千人ものフォロワーに対して扇動的なメッセージを投稿していた。ロビンソン元受刑者は現在、キプロス滞在中で、プールでのんびり寝そべる姿が報道されている。支持者への扇動メッセージはすべて、キプロスから発信されたもよう。

ロビンソン元受刑者のXのアカウントは凍結されていたが、Xを所有するイーロン・マスク氏が昨年11月に復活させていた。

マスク氏は先週末、イギリスでの騒乱について「内戦は避けられない」と投稿している。これについてBBCはX社にコメントを求めたが、同社からの回答はない。

ソーシャルメディア企業は「2つのことにしか反応しない」と、バス氏は言う。ひとつは法改正。もうひとつは、「地域社会での暴力行為やひどい恐怖につながるうそを容認するような、そんなプラットフォーム」には関わりたくないと、広告主が次々と撤退することだと。

各地の一連の騒ぎは、北西部サウスポートで7月29日に、幼い子供の集まるダンス教室が刃物を持った少年に襲われ、3人が死亡し多数が負傷した事件を機に発生している。

調べによると、殺人罪などで起訴された17歳少年はルワンダ出身の両親のもと、英ウェールズ・カーディフで生まれた。しかし事件直後から、犯人について偽情報がオンラインで飛び交い、ムスリム差別や移民排斥と結びつき、事件の起きたサウスポートをはじめとする各地で反移民集団が警察と対峙(たいじ)する事態となった。さらに、反移民集団と、それらに対抗する抗議グループとの対立も悪化している。

4日には、難民申請中の人たちが宿泊していると思われている複数のホテルが標的にされた。

極右勢力は長年にわたり、こうした移民を攻撃の対象にしてきた。難民申請者が待機するホテルのリストはソーシャルメディア上で共有されており、次にどこが攻撃されるのか分からない状況になっている。

ソーシャルメディア大手が責任ある行動をとらないのなら、各社の資金源を断つよう、広告主に広告出稿の中止を「働きかけるべき」だとバス氏は述べた。

また、憎悪に満ちた過激主義に関連する法律には、埋めるべき溝があるとバス氏は指摘した。それによって、特にロビンソン元受刑者が「地中海のサンベッドから暴力行為を美化し、作り出す」のを、阻止する必要があるからだという。

「ヤクスリー=レノン(ロビンソン)は、自分が警察や対テロ警察や治安当局から徹底的に監視されていることを重々承知している」

それだけに元受刑者は「ぎりぎり法律に触れない範囲で長年、活動してきた」とバス氏は言う。それによって、「議論を有害なものにして扇動し、いま起きているような騒乱」を引き起こしたのだと。

元受刑者のそうした行動が法律の敷居を超えない、法律に触れないのならば、「法律の敷居の設定が間違っているのかもしれないと、政府や社会は検討する必要がある」と、バス氏は付け加えた。

(英語記事 Ex-police chief likens riots to terrorism

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cwy55w36753o


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