香川県出身の大スターではまず丸亀市生まれの市川右太衛門(1907~99年)がいる。もっとも幼い頃に大阪に移っている。歌舞伎から映画に入って昭和のはじめから半世紀にわたってチャンバラ映画専門だった。「うわっはっは……」と豪快に笑う「旗本退屈男」シリーズが代表作だ。主役がやれなくなったら脇役にまわったりはせずに引退するという考え方で、つまりはスターであることに徹してファンの夢を大事にした人だ。生前に何度もお目にかかったが、殿様のように大きく構えているのに、ぜんぜんいばってはいないという人柄のいい人だった。北大路欣也の父親であり、彼は見事にこの偉大な父親の芸風を受け継いでいると言える。
監督:朝原雄三
脚本:柏田道夫 山室有紀子 朝原雄三
音楽:岩代太郎 主題歌:「恋文」Chara(ki/oon Music Inc.)
題字:中塚翠涛
製作:「武士の献立」製作委員会
企画・配給:松竹株式会社
企画協力:エース・プロダクション
制作プロダクション:松竹撮影所
制作協力:松竹映像センター
公式サイト:bushikon.jp
(C)2013「武士の献立」製作委員会
大ヒット公開中
現役では「ウッチャンナンチャン」の南原清隆が香川県。日本映画学校の漫才の授業で相方の内村光良ともども才能を見出されて、以後まっしぐらの快進撃である。テレビの漫才ブームがおさまると、狂言の野村万蔵と組んで古典芸能の現代化とも言うべき「現代狂言」に成功したし、映画では「その日のまえに」(2008年)が評判だった。
女優では笠置シズ子(1914~85年)が大川郡引田町(現東かがわ市)の出身。戦中にジャズ歌手としてデビューしたが、ジャズは敵性国家アメリカの音楽だということで劇場公演を警察から妨害されたりすることが多く、芽が出なかった。それが戦後、ジャズをさらに過激にしたようなブギウギで大当たりすることになる。銀座の日劇の舞台を走り回るようにして歌った「東京ブギウギ」の威勢の良さは凄いもので、たんに歌手として成功したというにとどまらず、さながら敗戦を解放として受け止めた女性たちの歓喜の声というようにラジオをつうじて全国に響き渡ったものである。映画では黒澤明のヒット作「醉いどれ天使」(1948年)で黒澤明が作詞した「ジャングル・ブギ」を歌ったのが当時の彼女の圧倒的な迫力を伝えている。
監督では「踊る大捜査線」シリーズで大ヒットメーカーになった本広克行が丸亀出身である。彼はいま私が学長をしている日本映画大学の前身の日本映画学校の、そのまた前身の横浜放送映画学院で映画を学んだ。香川県はうどんで有名だが、その香川の人々のうどん好きを楽しく描いた「UDON」(2006年)という喜劇も作っている。郷土愛あふるる作品であった。