日本にとっての意味
インドがやりたいことはわかるが、日本にとってはどうだろうか。インドがQUADやNATO諸国と協力を深め、印中国境で、中国に圧力をかけてくれることは、中国が太平洋側に展開する戦力や予算を引き付けてくれることを意味する。その点で、日本としては歓迎していい状況がある。
ただ、それでなく、日本の戦略として、今回の展開は意義がある。日本もまた、海から、空や陸へと、展開できる戦力を増やす必要があるからだ。
海上自衛隊の努力があり、日本とインドは、深い関係を築き始めている。すでに米国海軍の艦艇はインドで整備を行っているが、日本の海上自衛隊の艦艇も、今後、インドで整備する方向で検討されている。
そうなれば、ソマリアの海賊対策など、インド洋に展開する日本の艦艇はそのままインド洋に常駐し、乗員だけ飛行機で入れ替えて展開することも可能になるかもしれない。日本の海上自衛隊の任務が増える中で、このような日印協力は、艦艇と乗員の効率的な運用につながっていくだろう。
しかし、艦艇だけでは、戦力不足である。中国からみれば、航空機の支援のない艦艇は、あまり強くないようにみえる。
そうなれば、中国は、日本のことを甘く見て、インドにしたように(最近ではフィリピンに対してもやっているが)、鉄の棒や青龍刀、斧などを振りかざして、死傷者を出し、脅そうとするかもしれない。中国は、相手が強く見えなければ、どんどん、行動をエスカレートさせてくるだろう。だから、艦艇だけではなく航空機も連携させ、中国に対して、甘く見られないようにしなければ、中国の行動は抑止できないのである。
その観点から、日本が海上自衛隊だけでなく、航空自衛隊の世界展開を進めていることは、意義がある。今年、航空自衛隊は、これまで同盟国だった米国だけでなく、豪州で「ピッチ・ブラック」に参加し、インドで「タラン・シャクティ」に参加した。22年にはフィリピンにも展開したことがある。
同盟国・同志国との連携を、海洋から航空に拡大しつつあり、その能力を世界に証明しつつある。NATO諸国が日本に来ているから、日本はNATO諸国への返礼として、行くことになるだろう。さらに、海上自衛隊、航空自衛隊の展開は、陸上自衛隊の展開にもつながりつつある。
8月20日の日印外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)の後、日印では陸海空統合の共同演習が計画され始める方向性にある。すでに米印間では実施されているものでもあるから、日印で実施できるはずだ。いずれ、最終的に、QUADで陸海空軍の統合共同演習を実施する方向性になっていくことが考えられる。
このような高い展開能力を、同盟国・同志国と連携して実施できるからこそ、中国の行動をインド太平洋全域で抑止し、平和を維持することができる。その重要な一歩として、今回の演習参加は意義があるだろう。