まさに、ピンチがチャンスとなったわけです。笠木さんによれば、ジンギスカンは宗教に関係なく食べられ、多様な人が暮らし、ラム肉が苦手な人が少ないニューヨークに合っていて、日本よりもウケるとのことです。私も何度も北海道で本場のジンギスカンを頂いていますが、それと全く遜色がないどころか、行者ニンニクをトッピングして、ニセコ産の白米と一緒に食べるジンギスカンは、これまで食べたものの中で一番美味しいと言っても過言ではありませんでした。
不満があるからこそ
改善する欲求が生まれる
「新型コロナは収束しましたが、以前のような活気は戻っていません。マンハッタンのオフィス空室率も20%を超えていると聞いています。ただ、ニューヨークは挑戦しがいのある街であることに変わりありません。渋滞もひどいし、道路には穴が開いていたり、ゴミが散乱している。日本で快適に暮らすことに比べると不満だらけです。でも、その不満があるからこそ、それを改善しようという欲求が生まれてくるのです。だからかもしれませんが、人々の活気自体は、東京よりもニューヨークの方があるように感じます。この街にはこの街の面白さや爆発力のようなものがあるのです。
現在のニューヨークにおける日本食レストランは衰退の状況にあります。古くからある日本食レストランがここ1年で次々と閉店しています。一方で、ファンシーな韓国料理、タイ料理、フィリピン料理などが台頭し、店舗数を増やしています。
調べてみると勢いのある所は国やその国の銀行がしっかりとサポートして新しいものが生まれているようです。日本の金融機関は米国での中小企業に対しての融資業務を行わないために、大きく育つものはありません。日本の食文化を世界に広げるという意味では、日本の金融機関や政府からのサポートがもっとあってもよいはずです」
米国に来て、やはり気になるのはチップ文化です。はじめから料金に含んでくれればよいのに、と思う日本の方も少なくないと思います。それについても、笠木さんは独自の視点から解説してくれました。
「チップは、全て従業員の手に渡ります。経営者には全く入りません。ニューヨーカーにとっては、若者を支援する〝投資〟という意味があると思います。夢を持っている若者たちを自分たちが支えるんだという思いがあるからこそ、具体的な数字が見えるチップという形の方が好ましいのです」
こうした姿勢は、私自身も見習っていきたいものです。