2024年12月22日(日)

令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史

2024年9月16日

圧倒的な興行収入
それを作り出した〝仕掛け〟

 スタジオジブリは当初、鈴木が所属していた徳間書店の子会社として設立された。05年まで関係は続き、『もののけ姫』の企画段階では、ジブリは徳間書店の一番の稼ぎ頭となっていた。

 「僕は好きな映画だけを作りたかったのに、徳間書店の代表として、銀行から金儲けを求められるようになりました。それに腹が立ったんですよ」

 『もののけ姫』は圧巻の戦闘シーンが印象的だが、企画当初、宮﨑が作りたいと言っていたのは「毛虫」をテーマにした素朴な作品だったという。

『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』のヒットの裏側を語る鈴木氏(写真・中村 治)

 「僕はへそ曲がりなんでね、『毛虫』と言われて逆をやりたくなっちゃった。しかも、お金儲けを要求されて腹が立ってるから、やっているうちに本気になっちゃって。実はそれが『もののけ現象』の根っこです」

 自分の思いとは裏腹に金儲けを要求された鈴木の「怒り」の昇華によって、『もののけ姫』はそれまでのジブリ作品の10倍、日本映画歴代最高の興行収入となる193億円を達成した。

 だが、宮﨑の次作『千と千尋の神隠し』は、そのさらに上を行き、平成最高となる304億円をたたき出すのである。

 そのきっかけとなったのは、当時、博報堂でプロモーションを担当していた藤巻直哉だ。藤巻は後に『崖の上のポニョ』で主題歌も歌うことになるほど、鈴木とは昵懇の仲である。『千と千尋の神隠し』の完成後、鈴木は町で藤巻に偶然遭遇した。

 「藤巻が『すごいですね、千と千尋。東宝は大喜びしていますよ。みんな言ってます』って言うから、『なんて言ってるの』って聞いたら、『もののけの半分くらいはいきますね』って。彼に悪気はなかったんだろうけど、もうカチンときてね。半分だと思ってるのかと。だから逆をいってやろうと、倍いこうってなったんです」

 またしても「へそ曲がり」が鈴木を本気にさせた。どうしたか。(聞き手・羽鳥好之   構成・編集部(梶田美有))

※こちらの記事の全文は電子書籍「ジブリがヒットを重ねる理由 “猛獣使い”鈴木敏夫の着眼点」で見ることができます。

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平成全史
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「平成全史」特集後編では、事件、災害、雇用、教育など、主に社会問題について考える。「失われたX年」と、過去の栄光を取り戻そうとするのではなく、令和の時代にどのようなビジョンを描き、実行していくのか?それは、今を生きるわれわれ自身にかかっている。


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