2024年11月21日(木)

孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

2024年9月28日

 トントントン。ジュワーッ──。小誌記者が訪れるとそこには、台所特有の調理音が鳴り響き、香ばしいにおいが漂っていた。

参加者は、自分で役割を見つけて料理に携わっていく。まさにフラットな関係だ(WEDGE)

 「それは大匙で量るんじゃない?」「これは半分に切ってから、斜めに切るんだよ」

 こう言って、和気あいあいと料理をしていたのは、シニア男性たち。彼らが所属するのは、「おとこの台所」と呼ばれる定年後の男性限定の料理サークルだ。2002年から始まったこの活動は、東京・世田谷区民や近隣住民で構成され、会員数は現在280人ほど。参加者の平均年齢は80歳近くで、最高齢には94歳の方もいるという。

おそろいの帽子と「おとこの台所」と書かれた黄色いエプロンが光る。中には料理のためにアームカバーをしている人もいた

 参加者のほとんどは料理初心者だが、冒頭のように、各々の手際の良さや支え合う雰囲気が目立った。「妻が社協に電話をして、または友人の紹介、ホームページを見て入会する人が多い」と話す(世田谷区)松原(地区)代表の峯清秀さん(81歳・写真中央)は、雰囲気を守り続ける秘訣をこう語った。「『命令しない・いばらない・前職のことは話さない』という3つのルールは守ってもらっている」。

 また、レシピは本格的で、この日は、生バジルを刻んでつくる「鶏もも肉のバジルソース」、イカをおろしてつくる「イカとモロコシのバターライス」など、一風変わった料理が並んだ。入会前から料理経験豊富な厨房担当の別府一敏さん(76歳・写真右から2番目)は、はにかみながらこう話す。

 「いわゆる家庭でよく作られる料理では、妻と料理について喧嘩になってしまうこともある。独自性をもたせるため、このようなレシピが多い」


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