肩書を捨て、集う意味
「おとこの台所」は世田谷区社会福祉協議会が支援する『支えあいミニデイ』として活動していて、食材費や場所代、光熱費代として区の補助があり、1人500円で参加できることも魅力の一つだ。買い出し担当が食材購入する際は、どのスーパーでいくらで購入したかを共有している。まさに、会社員時代などに培った経験を活かした運営が行われている。
デザートも食べ、幸せな表情が並ぶ団欒の中、各(地区)台所の厨房担当の講習会も兼ねて、反省会が行われた。「茄子の切り方がバラバラだと火の通りが偏るので気をつけたい」などの意見は各台所に持ち帰り、次に活かす。ただ楽しむだけではなく、「よりおいしく」という気持ちが感じられた。
参加者に「おとこの台所」に入会してからの期間を聞くと、1年の人もいれば、5年や8年、長い人だと10年、20年という人もいた。なぜ続けられるのか。記者が締めの会で問いかけると、参加者から次のような答えが口々に返ってきた。
「やっぱり、楽しいから」「自然体でいられるし、しがらみもないからね」
定年後に肩書を捨て去り、今までとは全く違った環境で新しいことに取り組む。その理想形のような居場所が、ここにはあった。