2024年10月11日(金)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2024年9月26日

政治的に容認されやすいのは金利上昇よりも円安

 冒頭にも言及したように、今後は誰が首相になろうとも、日本経済は円安か金利上昇か、いずれかを受け入れる必要がある。結局、円安やこれに伴う株高を放置した場合のスナップショットが今年3月末や6月末の資金循環統計であり、数字だけを見れば前向きなイメージが得られる。

 9月以降の同統計は「金利上昇を前提とした場合、家計金融資産が目減りする」という絵図が示される可能性がある。それ自体、政治的には愉快な話ではないだろう。

 また、金利上昇それ自体は住宅ローン金利上昇などを念頭にやはり政治的に嫌気されやすい論点ではある。実質所得環境の悪化を促す円安も決して甘受できる相場現象ではないが、短い時間軸で「政治的な失点に繋がりやすい」という意味では金利上昇は政治家が受け入れ難いという胸中は察するに余りある。

 こうした認識に立つと、為政者として金利上昇と円安の二者択一を迫られた場合、望む望まないにかかわらず、やはり円安が選択されやすいのかもしれない。ポリシーミックスで考えると、財政政策は金利上昇リスクに配慮して緊縮寄りにするものの、通貨・金融政策は円安・緩和寄りという選択である。もっとも日本において財政緊縮が選択されるのかは多分に怪しいものがあることから、結局、野放図なマクロ経済政策運営の下、国債市場はともかく為替市場が円売りで攻め込まれる状況は出現しやすい。

 とはいえ、この期に及んでは「二者択一で済めば良い」という心構えも必要かもしれない。今後、日銀の連続利上げが行われる未来がもし到来するのならば、それは通貨防衛の手段として執行されている可能性が高く、その時点では円安と金利上昇が同時発生している可能性が高いと筆者は懸念している。

 言い換えれば、いわゆる「金利のある世界」が定着する状況を想定した場合、恐らくそうすることでしか円安を抑制できないという差し迫った状況に陥っているのだと推測する。今後迎える新政権において、容認されやすいのは金利上昇よりも円安なのかもしれないが、実際は双方の相場現象が同時発生するリスクも頭に置きたい。


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