2024年10月4日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年10月4日

アジア各国でも広がる中国向けMBA

 一方で、彼らが日本で中国語MBAに入った背景には、中国側の事情もあるそうだ。

 「会社経営が一段落した彼らは『学びたい』という強い意欲を持っており、当然、中国の大学でのMBAを取得したいと考えていましたが、現在、中国の大学院は現役の学部生が有利で、社会人が入学しづらい状況にあります」(雷氏)

 24年3月、中国教育部(日本の文部科学省に相当)の発表によると、23年の中国の大学院の受験生は約400万人だったが、合格者は約130万人。そのうち修士課程は前年比4%増の約114万人、博士課程は10%増の約15万人だった。就職難のため、学歴を少しでも上げ、自分に付加価値をつけようと大学院に進学する学部生が多い。

 また、中国の経営者の中には、これまでMBAやEMBA(エグゼクティブMBA)で学んで異業種の人脈を築いてきた人が多かったが、習近平政権下で、中国共産党幹部と経営者の癒着を懸念する動きがあることも、彼らが中国国内でMBAを取得することを躊躇する流れと関係している。

 こうした理由により、海外でMBAを取得する動きが広がっている。シンガポール国立大学では、90年代から中国出身者向けにEMBAを開始した。韓国の慶熙(キョンヒ)大学も600人が入学できる中国語MBAを開設し、1年半で学位が取得できる。タイなどでも同様の動きがあり、今後もこうした取り組みをする大学が続々と出てくる見込みだ。

 ちなみに、中国の大学のMBAの学費は、学校によって異なるが、日本円に換算して800万円以上することがざらだが、桜美林大学の場合、約270万円(24年4月現在)と中国の半分以下と、中国人経営から見れば“格安”だ。しかも、講師レベルも高く、日本は生活環境もいい。こうした理由から、今後も中国を飛び出し、日本など海外でMBAを取得しようと考える中国人経営者は増加することが予想される。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る