2024年11月24日(日)

科学で斬るスポーツ

2014年1月23日

 余談だが、選手が身に着けるレーシングスーツも低い空気抵抗と、姿勢保持、脚の伸ばしやすさを重視してデザインされている。図9は、ミズノが、ソチ五輪スピードスケート代表のために開発したスーツだ。空気抵抗を考慮した素材のほか、腰を曲げた低い姿勢をとるときの体への負担を軽減し、長い間、姿勢を維持しやすいよう背骨付近が補強されている。(図10)

図9:日本代表のレーシングスーツ
図10:スーツの背中部分には、低い姿勢を保つために、体を支える素材で補強されている(提供:ミズノ)

疲れのピークをどこに持って行くか

 低い姿勢が大事だということがわかっていただけたと思うが、こうした姿勢は、実は筋力だけでなく、疲労などの微妙な体調が深くかかわってくる。気負い過ぎて、力んでもマイナスになる。

 その意味で、レースで最高の力を発揮するためのコンディショニング(体調管理)である「ピーキング(テーパリングとも言う)」が勝敗のカギを握ると言える。

 ピーキングは、本番に合わせて練習量、強度、休養の取り方を計画的に実行することである。大事なのは、疲労のピークを試合前のどの時点に持っていくかをつかむことである。そして直前は、練習強度を下げずに、練習量を減らして疲労回復をはかるが、筋肉に残る微妙な疲労が、勝敗に影響を与えるので、経験がものを言う。同じようにピークをもっていったとしても時々の精神状態、技術、練習法などによって本番でパワーを全開できるとは限らないからだ。つまりデータベースが必要というわけである。


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